4: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/11(火) 23:23:13.40 ID:AVuudPRF0
ぷは、と空気の漏れる音がした。それがどちらのものだか不明瞭なままに、俺たちは顔を離す。
アイスキャンディはソーダ味だった。懐かしい味。安っぽい味。すぐに鼻から抜けて消えてなくなるくらいの薄らとした。それよりもよほどイクの芳香が強烈であるくらいには。
「提督」
イクは笑った。もしくは、笑っていた。
言葉が続くと思ったが、それ以上はなにもなかった。無言のままに手と手が重なる。彼女の左手と、俺の左手。机の上で交差するように。
その交差はまるで不自然極まりなかったが、その意味はすぐに知れる。かちん、かつん、互いの左手、その薬指に嵌った指輪が、軽やかに、愉快そうに、ぶつかって音を鳴らす――否。イクが音を鳴らしている。
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