90: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/14(金) 23:09:35.54 ID:eY+H6i2KO
「……あなた、もっと色々知ってるんじゃないの」
イスラフィルに向かう道中、私は魔王に訊いた。お昼を食べてから、彼の機嫌はずっと悪い。それはあのランパードという男によるものなのか、それとも私の迂闊さによるものなのか。……きっと両方だろう。
「色々とは、何だ」
「私を狙っている人たちの正体。色々な国が狙っているって言ってたけど……」
魔王は数秒黙った後、口を開いた。
「知ってどうなる」
「今から向かうモリブス公国も、私たちの敵なの?」
「……あそこは、まだマシだ。少なくとも、統領のベーレンは協力者だ。ただ、閣内にはお前を消したいと思っている連中が多いだろうな」
そうなのか。とすれば、そこまで心配しなくてもいいのかな。
「じゃあ、あのデイヴィッドって男は」
「……分からん。ただ、あいつは……間違いなく、国の中枢に近い人間だ。『遺物』持ちの時点で、普通の暗殺者じゃない」
魔王はまた口を閉ざす。何か、言葉を選んでいる気がした。
「まだあんなのがいるの?」
「……多分な……ん」
魔王が馬を止めた。
「……少し早いお出迎えのようだな」
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