745: ◆Try7rHwMFw[sage]
2021/01/11(月) 18:29:47.79 ID:m+vxd/s9o
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「あ、戻ってきた」
宿に着くと、ちょうどクロエさんたちがフロントに出てきたところだった。湯浴みの後なのか、2人とも髪が濡れている。
「……随分暢気なもんだな」
「もっと肩の力を抜いたら?少なくとも、『今日は』何も起こらないはずだし」
……何で言い切れるんだろう?確かにクロエさんたちは戦いに慣れてそうではあるんだけど。
疑問を口に出しかけたけど、とりあえずやめた。確かに、私もエリックも、難しく考える癖があるのは確かだし。
「今日のご飯って、予定あります?」
「ん、ないけど。プルミエールさんは、ここに来たことってあるの?」
「いえ、初めてなんですけど。さっき、ある方から自分の店に来てくれって。お代はタダでいいそうです」
ブランさんが渋い顔になった。
「タダ?本当に大丈夫かそれ。店の名前は?」
「はい、『アンバーの隠れ家』って」
「ウッソだろ!!?」
彼が驚きで叫んだ。クロエさんも口をあんぐりと開けている。
「それ、エルファンでも滅多に予約が入らない超人気店だよ……」
「そうなんですか?」
「皇族や貴族でも簡単に予約が取れないって話。父さんは1度行ったことがあるらしいけど……どうしてそんなことに?」
私はさっきの出来事を話した。「へえ」とブランさんが呟く。
「俺は知らないけど、ビクター・ランパードってトリスの貴族とそっくりなのか。それが縁と」
「店主がどんな人か知らなかったけど、ちょっと変わった人なのね。確かに名前が幾つもあるとか、正体不明とかいう噂はあったけど。
でも、こんな機会なんて二度とないだろうから、乗ってみようかな」
そこまで凄い人なのか。とてもそうは見えなかったけど……
エリックが何か考えている。
「どうしたの?」
「いや、何で俺を見て涙ぐんだのか、よく分からなくてな。少なくともあの男、ただの料理人じゃないぞ」
「うん……確かに。マナの『色』とか言ってたし」
どういうことなんだろう?とりあえず、行けば何かわかるのかな。
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