魔王と魔法使いと失われた記憶
1- 20
740: ◆Try7rHwMFw[sage]
2021/01/11(月) 18:26:06.23 ID:m+vxd/s9o
#

「……えっ?」

「ん?部屋は2部屋だよ。私はブランと、であなたたちと」

エルファンの宿のカウンターの前。プルミエールが口をパクパクさせたまま固まっている。……さすがにそれは聞いてない。

「……どういう意味だ」

「あ、そういう関係じゃ『まだ』ないの?アリスさんからはそう聞いてたけど」

「違うっっ!!!どうしてそんな適当な……そもそも、お前らは一緒でいいのか?」

「そりゃねえ。もう20年もいれば家族同然だしね」

「……はあ」

溜め息をつくブランの頭を、クロエが軽くはたく。

「何嫌そうな顔してんのよ」

「どうせ主導権はそっちなんだろ、知ってる。暴君の『姉』を持つと疲れるよ……」

「ほう、そこまで搾り取られたいの?」

今度は俺が溜め息をついた。「そういう関係」か。

にしても、こんな緊張感がないやり取りをできるのはやはり妙だ。

「……分かったから騒ぐな。今日はそういう部屋割りでいい。まだ日は高いから、少しぶらついてくる」

「了解。7の刻までに戻ってくればいいわよ」

宿を出た俺の後を、プルミエールがついてきた。

「ちょっと、幻影魔法は?ただでさえ目立つんだから……」

「……おかしいと思わないか」

「え?」

「あの2人、あまりに余裕がありすぎる。まるで、『何も起こらない』のを知ってるかのように。
そもそも、最初からしておかしい。カルロスがやられそうになった所に都合よく現れたらしいが、そんな偶然があるのか?」

「まさか、疑ってるの?」

クロエたちは多分、敵じゃない。俺たちを殺そうとするなら、単に油断した所を背後から刺せばいい。
ただ、何か裏がある。あるいは、この件自体が何か別の意図があるのじゃないか?

「……分からん。考えすぎかもしれないな」

俺は、今の推測を話すのはやめることにした。まだ早い。

そもそも、クロエとブランはさほどプルミエールと歳が変わらないだろう。せいぜいクロエが俺と同じ程度のはずだ。
未熟だから、緊張感なくいちゃつける。その可能性も、なくはない。

プルミエールがはぁと息をついた。

「色々この数日あったし、疲れてるのよ。少し湖畔を歩いて、ゆっくりしましょ?」

「……そうするか」

プルミエールが不意に俺の手を握った。体温がぶわっと上がるのが分かる。

「何だそれは」

「え、嫌だった?」

「嫌じゃないが……」

「ならいいじゃない。サラファンって、ちょっとした避暑地だし」

辺りを見ると、確かに家族連れや恋人同士が多い。
オルランドゥ大湖のほとりにあるこの宿場町は、テルモンからの観光客が多いのを俺は思い出していた。
だとしたら、恋人を「演じた」方が不自然ではない、のか。

「分かったよ」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice