731: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/29(火) 21:47:50.03 ID:Dh94pGk20
#
1階の応接室に入ると、彼らが落ち着かない様子で座っていた。
「娼館なんて初めてだけど、こんな感じなんだな。もっとゴチャゴチャしてると思ってた」
「来る必要もないでしょ……あ、来た来た」
私たちは、彼らの向かいに座った。
「ごめんなさい、やっと処置が終わって……。お待たせしました」
「いえいえ、お気遣いなく。あなたのことは、アリスさんから聞いてるわ。今までで一番の学生だと」
「そんな……お世辞ですよ」
コホン、と隣から咳払いがした。エリックも相当に疲れているらしい。
「手短に頼む。正直、結構限界だ」
「そうね、申し訳ない。私たちがアリス・ローエングリン教授からのお願いで来た、とは言ったわね」
「ええ。でも、なぜあなた方が教授と知り合いなんですか?
確かに、反皇室派を支援しているとは聞いてましたが」
「厳密には『反皇帝派』ね。皇室にもマシなのはいるから。
アリス・ローエングリン教授……そしてジャック・オルランドゥ氏は私たちの協力者であり、皇帝に対抗する力を与えてくれるパトロンなの」
「……解せんな」
エリックが会話に割り込んできた。
「まず、一介の学者がテルモンの件に首を突っ込む理由が分からない。
それに、ブランだったか?お前はイーリス出身で、テルモンの件なぞどうでもいいだろう」
「……そもそも、何で私の父が反旗を翻したか、知ってる?」
「いや」
「皇帝ゲオルグの圧政が理由なんじゃないですか?」
私の言葉に、クロエさんが小さく首を縦に振る。
「それはもちろんある。でも、もっと大きな理由がある。
父はテルモン南西部にある小都市、ヘイルポリスの領主だった。そして、ヘイルポリスには小さな遺跡があるの」
「遺跡?」
「そう。『断絶の世紀』は知ってるでしょ?私たちの世界には、『500年前から過去の記録が一切ない』。
ただ、その手掛かりとなる遺跡は幾つか世界に存在する。ヘイルポリス遺跡もその一つ」
「断絶の世紀」はもちろん知っている。ただ、「遺物」や「秘宝」がその手掛かりになりうるものだとは聞いていた。
ただ、どこから出土したのかというのまでは知らない。
……何か、ざわざわしたものを胸の内に感じる。なんだろう、これ。
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20