723: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/29(火) 21:42:12.94 ID:Dh94pGk20
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……そして、俺はこの2人と出会った。
メディアが抱いているのは、干からび骨と皮だけになりつつあるカルロスだ。まだ息はあるのだろうか。
「……主役、だと?」
「そう。アリス教授からの依頼でやってきたってわけ。ああ、さっき彼女には自己紹介したけど改めて。
クロエ・シュトロートマンよ。よろしく」
差し出された手を握るべきか、俺は躊躇した。敵意はないが、本当に信用できるのか?
男が肩を竦める。
「その格好じゃ怪しまれるだろ。『パワードスーツ』、解除しないと」
「あ、それもそうね」
女が左手首に触れると、甲冑は煙のように消えた。女はごく普通の町人姿になる。……こんな魔法、見たことがない。
「何をやった、そして何者だ?」
「あー、これ?装備を解除したの、魔法じゃないわ。まあ説明が長くなるけどそれは置いとくわね。
私はカール・シュトロートマンの娘。パパの名前は聞いたことあるでしょ?」
「……テルモンの反皇室派の長か?確かに、アリス教授は協力関係にあるとは聞いていたが」
「そ。で、今手が離せないってことで、私たちが代わりにね。というか、この子大丈夫?」
メディアが悲しげに首を振る。
「……私のために……力を使いきった。もう、このままじゃ」
男がカルロスに駆け寄る。すぐに渋い顔になった。
「……確かに、これはまずいな」
「何とかできそう?」
「さっきの子供はただの過労だから良かったけど、こっちは深刻だね。……一応薬一式はあるけど、見たところ老化の進行だから気休めにしかならない」
「……そうか。彼、あなたの大切な人なんでしょ?」
コクン、とメディアが頷く。
「もう、どうしようも……」
「苦痛なく逝かせることならできるけど。延命を望むなら、一応応えられる」
……こいつら、医者か何かか?シュトロートマンの娘が、そんな大層な奴だとは聞いたことがない。
「延命?」
「といっても数日。最期のお別れぐらいは言えると思うわ」
メディアは悲しそうに俯き、胸元から緑の宝石を取り出した。
「……これを使えば、彼は助かる」
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