724: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/29(火) 21:42:43.15 ID:Dh94pGk20
「……あなた、それって」
「『女神の雫』。私の生命の結晶。そして、『願い』を一つだけ、叶える力を持つの」
男の目が見開かれた。
「伝承は、マジだったのか!!?」
「……伝承?」
「ああ。ユングヴィに伝わる話だ。『巫女は命と引き換えに『女神の雫』を産み出し、それをもって干天に慈雨を降らせた』とね。
150年前、怪物となり倒れた夫の願いを聞き入れ、巫女は雨を降らせたのさ。
自分を我が物にしようとした豪商と、ロックモールの一部を水没させるだけの豪雨をね。
そして、その引き金となったのが、その宝石って話だ。娘を逃がした時に、もう覚悟は決まっていた……と解釈されてる」
「随分詳しいのね」
男が苦笑した。
「まあ、一応イーリスの人間だしな。……エリックが来たということは、アヴァロンは」
「俺が殺した」
「そうか。親父に代わって礼を言うよ。まだ、残党は多いが……」
「親父?」
「ああ、俺の紹介がまだだったな。ブラン・コット。親父はイーリスの第一師団団長だ。俺は放逐された身だがな」
イーリスの第一師団団長の息子?それが、なぜシュトロートマンの娘と……一体、何が起きている?
クロエがメディアを見つめた。
「……それを使えば、あなたは死ぬ。でも、彼は助かる。そういうことね」
「……私は、所詮ヒトじゃない。そして、誰かを愛することも許されない。……ならせめて、この命は彼を助けるため……」
「……ダメ、だ」
掠れた声。カルロスが、口を開いた。
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