722: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/29(火) 21:41:27.02 ID:Dh94pGk20
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そもそも、ここに来るまでがおかしかった。
デボラに案内されるまま、限界に近い身体を何とか動かして俺たちは砂浜を走った。
途中、木陰で休んでいるヴェルナーを見つけた。息があることを確認し、もう少し先へと進む。
「シェイド!!?」
デボラがうつぶせに倒れているシェイドに駆け寄る。その表情は、すぐに安堵へと変わり、やがて疑念へと変わった。
「……どうした?」
「いや、寝てるだけさ。……でも、『マナが戻っている』」
「何?」
「こいつもギリギリで動いてたからね。だから、ここであんたらを呼びに行くのを託されたんだ。
『少し休む』って言ってたから、意識を失っているのはいいんだ。でも、体力もマナも回復しているなんて、あり得ない」
「……誰かが回復魔法を??」
後ろからプルミエールが割り込んできた。デボラは首をひねる。
「どうだろうね。というより、睡眠魔法(スリープ)もかけられてる気がする。
あたしはここで少しシェイドの様子を見るよ。あんたらは先に行ってな。あたしじゃ、あいつらとは戦えない」
「あいつ『ら』?」
「深紅の大剣を持った男さ。間違いなく『使う』」
ぞわっと背が逆立つ錯覚がした。……あいつだ。
「……デイヴィッド……!!」
「やはり、知ってたね」
「……万全でないと、戦える相手じゃない。無理そうなら、すぐに全力で逃げる。
カルロスについては……運を天に任せる以外にない」
オルランドゥ魔術都市から出た際、デイヴィッドはまだ実力を隠していた。
もしあそこで本気を出されていたら……どちかが死んだはずだ。
そして恐らく、それは俺の方だっただろう。「閃」は、プルミエールがいる以上使いようがなかったからだ。
逃げる体力は残っているか?数秒ぐらい、「5倍速」を発動できる程度はある。ただ、誰かを守るのは……無理だ。
「プルミエール、お前はここにいろ」
「……分かった。無理は、しないで」
「そのつもりだ」
俺は小走りで街道へと向かった。……戦闘は、もう終わっている?
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