605: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/30(月) 22:07:51.35 ID:KnL3hUx3O
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「さあて、色々聞きたいことはあるんだけど……まずはあんたが本当は何者か、だねえ」
メディアの表情は乏しいけど、僅かに沈んでいるようにも見える。
カルロスが、彼女の右手に自分の手を重ねた。
「……メディア、俺は大丈夫だから」
微かに彼女が頷く。
「まず確認にゃ。君は、『女神の樹の巫女』。それで合っているにゃ?」
「……それが本当は何者なのか、あなたは知っているの」
「……あ、言われてみればにゃ。古い歴史書の、断片的な記述でしかボクも知らないにゃ……」
「でしょうね。都合の悪い箇所はユングヴィ教団が徹底して消したから」
「……解せんな。なぜユングヴィの連中が絡んでくる?」
体力回復の薬湯を飲みながら、エリックが訝し気にメディアを見る。
「ユングヴィが絡む理由は多分分かるにゃ、ボクを呼んだユリウスって男から聞いたにゃ。
150年前に、『女神の樹の巫女』の子供がユングヴィ教団の幹部まで登り詰めたって話はしたにゃ?その子供が、大量殺戮を行ったらしいのにゃ。
ただ、何がどうなってそんなことになったかは知らないにゃ。君は何か知ってるにゃ?」
「……ええ。それには、私の正体を言わなければいけない」
「正体?」
チラリ、とメディアがカルロスの方を見た。
「俺は大丈夫、覚悟はできてる」
「……ありがとう。まず、私は人間じゃない。あの、『女神の樹』の一部」
「……『一部』?」
「ええ。私……『女神の樹』は、繁殖する相手を持たないわ。同族に雄体はいないし、受粉もできない。
ただただ長い間、孤独に生きるより他ない生命。ただ、それでも本能が、子を残そうとすることはある。
そういう時に私が生まれるの。『雌蕊』として」
「『めしべ』?何だそれは」
ポンとシェイドが手を叩いた。
「学術書にあったにゃ。植物は、雌蕊に花粉を受粉することで繁殖するにゃ。……ああ、つまり」
「ええ。私は、ヒトの精を受けるための器。そして、子を為したら消える運命」
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