604: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/30(月) 22:07:07.24 ID:KnL3hUx3O
「メディアっ!!!」
カルロスの別荘に着くや否や、彼はメディアの方に駆け寄った。そして、感極まったように彼女を胸に抱く。
「……良かった……本当に……!!」
「……ごめんなさい。私、言っていないことが……言えなかったことが、たくさんある」
「いいんだ……君が戻ってきただけでも、俺は……」
カルロスが涙をゴシゴシと拭いて、あたしを見た。
「……心底恩に着る。あんたは親父の仇だけど……もう、いい」
「……問題は、これからだと思うけどねえ」
逃げ去り際にちらっと見えた、あの惨劇。エストラーダ侯に、一体何があったのだろう?
あんなことになった以上……もう、ただじゃ済まない。既にベーレン侯の元には、軍の派遣を要請する早馬が飛んでいるはずだ。
そして、それにこのメディアという女は、恐らく深く関わっている。これで「めでたしめでたし」となることは、まず考えられない。
「まず、エリックを待つにゃ。あいつなら、少なくとも逃げ切れると思うけど……」
シェイドの言う通りだ。あいつの「加速」は恐ろしく汎用性が高い。どういう原理かは分からないけど、認識速度まで加速されているようだった。だから、防御に徹すればそう簡単にはやられない。
1年前にカルロスの父親を討った時、「回転銃」の銃弾の雨を容易く潜り抜けていったのを思い出す。
「あ」
プルミエールが街の中心部の方を見た。エリックが、息を切らしながらこちらに走ってくる。
「エリック!!」
着くや否や、エリックは力尽きたように崩れ落ちた。それをプルミエールが抱きかかえる。
「……大丈夫、だ。魔力を、使いすぎた、だけだ」
「アヴァロン大司教と、エストラーダ侯は」
「……逃げた。まず、少し、休ませてくれ……色々、話したい、ことがある」
メディアが視線を落とした。感情が薄い子だと思っていたが、その行動からは幾許かの後悔のようなものが見えた。
……さて、鬼が出るか蛇が出るか。
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