551: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/18(水) 23:02:24.95 ID:lSBzGI7SO
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「考えって何にゃ?」
ボクはかき氷が乗った匙を口に入れた。ロックモール名物らしいけど、マゴの実から取った蜜とあいまって実に美味しい。モリブスに戻ったら作ってみよう。
デボラさんはグバのジュースを飲むと、周囲をうかがって小声になった。
「渡しとくよ」
「……これって」
デボラさんが、懐から何かを取り出す。
手渡されたのは、黒い球だ。受け取ってすぐ、それがいかに危険なものか察した。
「そう、爆裂魔法を込めた『爆弾』だよ。魔力を通せば、離れた場所でも起爆できる」
「何でそんなものを持ってるにゃ?危ないにゃ」
「何が起こるか分からないからね。ロックモールにあいつがいると聞いて、組から持ってきたのさ。籠城したのを炙り出すためには、必要になると思ってた。
あたしの魔力を通さない限り爆発はしないから安心しな」
「……見えたにゃ。ボクはこれを置いたら、すぐに猫になって逃げるにゃ。そしてそれを受けて起爆すれば……」
「統治府は火事になり、アヴァロンはメディアを連れて出てくる。そこをエリックたちと叩く。どうだい?」
確かに、筋は通る。アヴァロンが「グロンド」を使って逃げるかもしれないけど、やってみる価値はありそうだ。
しかし……この作戦には、一つ見落としがある。
「オーバーバックはどうするにゃ」
デボラさんが言葉に窮した。あの男は、どこにいるのか分からない。そして、間違いなく只者じゃない。
「……それだね。敵はアヴァロンだけじゃない。炙り出しても、オーバーバックってのに守られていたら簡単じゃないのは分かる」
「対策が必要にゃ。あいつを引き離さないと……」
「賭場にいるって言ってたね。そこで何とか……え?」
デボラさんの表情が固まった。信じられないものを見たように、口がポカンと開けっ放しになっている。
ボクも振り向いて彼女の視線の先を見た。
……馬鹿なっっ!!?
カフェの入口に、黒い眼鏡の男がいた。短い黒髪に、黒と緑の斑の服。その異様な出で立ちから、客がざわめいた。
あの外見……間違いない。オーバーバックだ。
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