魔王と魔法使いと失われた記憶
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504: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/08(日) 22:02:42.68 ID:MGCdRfMlO
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プルミエールがカルロスと一緒に応接間にやってきた。手には幾つかの衣装がある。

「子供の頃の服がまだあった。ネーナ婆の物持ちの良さには驚くな」

「本当にいいものは、数十年使えるものですよ。貴方の服も、かつてご主人が着ていたものです。
世継ぎがお生まれになった時のために、それも取っておいたのですよ」

厨房でスープを作りながら、老婆が微笑んだ。

「……世継ぎか。いつか見せたいものだな」

「お坊ちゃまなら、遠くないうちに見せられますよ。私が生きているうちに」

「……そうだな」

プルミエールが衣装を置いた。確かに、上等に仕立てられたものらしいのは見て分かる。

「幻影魔法を使った変装術は、ランパードさんから原理は教えてもらったわ。
耳の形と肌の色を変える程度しかできないけど、それでも格段にあなたと見抜きにくくなると思う」

「なるほど……デボラ、お前はどう思う」

「悪くないと思うね。私やプルミエールは、変装してもなお目立つ。何より、ロックモール中枢部には女に飢えた連中ばかりだからね。襲われても逃げられるとは思うけど、騒ぎにはなる。
あんたが単独で行くのは、そう悪いことじゃないと思うね。問題は、その見た目だけど」

その通りだ。俺の外見は、せいぜい14、5のガキだ。もっと下に見られるかもしれない。
少なくとも、酒と博打と女の街、ロックモールには不相応だろう。

「……道に迷ったという体裁を取るか」

「それしかないねえ。で、どこに行くんだい?」

俺はチラリとプルミエールを見た。どこか不安そうな顔をしている。

「……賭場街だな。花街に行ったところで相手にはされないだろう。何より、人が多く集まるからな」

「それが賢明だねえ」

プルミエールがほっとした様子になった。心配しすぎだ。

「でも、賭場街に行ってどうするんだ?まさか、博打を……」

「種銭ならあるさ。道に迷った貴族のボンボンが馬鹿ヅキで勝ちまくれば、嫌でも誰かが注目する。そこを突破口にするつもりだ」

「勝ちまくればって……自信が?」

「伊達にお前より10年近く生きているわけじゃないさ」

カルロスの心配は当然だろう。だが、賭け事はジャックに一通り仕込まれている。というより、あいつの退屈しのぎの相手をさせられていただけだが。
それでも疑いなくジャックは一流の博徒だ。モリブスでジャックの世話になっていた時、腕に自信がある博徒が何人もあいつに挑むのを見た。しかし、その全てにジャックは勝っている。
俺はその域にはないが、普通の相手なら負けることはない。それだけの自信はある。



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