505: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/08(日) 22:03:11.61 ID:MGCdRfMlO
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「……これで8連勝かよ」
計画は順調だった。何も知らないガキのふりをし、賭場に「迷い込み」、幸運だけで勝ったようにみせかける。
これが続けば、間違いなく支配人がこちらに来るだろう。俺を締めに来るか、本気で身ぐるみはがすために。
その時が交渉のタイミングだ。「モリブスの貴族」ということにしておけば、向こうの目の色も変わるだろう。
「運がいいだけですよ」
「……馬鹿ヅキかよ。ガキに舐められるのもいい加減にしてもらいてえが」
周囲の目が苛立ちと怒りに染まり始めていた。賭場の「親」は何度か俺をはめようとしているが、その度に巧い具合に降りて出血を最小限にとどめている。
この「テル・ポルカ」はカードを使った遊戯だが、単なる運任せでは勝てない。そして、そのことをほとんどの博徒は知らない。
重要なのは確率と席ごとの行動。そして賭ける額とその時期。ジャックはそれを体系立てていた。知識量の差が、そのまま圧倒的な勝率となっていたのを、俺は知っている。
「クソッ……小僧、まだ続けるよな?」
「あっ、はい。この遊戯って楽しいですね」
「……楽しいだけで終わると思うなよ。ちょっと待っていろ」
「親」役が奥へと引っ込んだ。支配人と思われる男の怒声が響く。
そして、身なりのいい初老の男がやってきた。口は微笑んでいるが、目は一切笑っていない。この男が、支配人か。
「君、随分勝っているそうじゃないか。どうだね、ここで大きく勝負してみないかい?」
「えっ……ちょっと、怖いんですけど」
「ふふ、しかし勝てば君は一晩のうちで大金持ちだぞ?どうかね」
俺は悩んでいるふりをしてみせた。……食いついた。
問題は、この男がどれだけの情報を持っているかだ。この賭場が、テルモン政府直轄の運営とは知っている。テルモンの、あるいはアヴァロンの意図を知ることができるか……?
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