488: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/01(日) 21:05:48.09 ID:7lCLmiUQO
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「大丈夫なんでしょうか」
シャツ一枚のデボラさんが振り向いた。
「大丈夫って、なんだい」
「カルロス君です。……仇なんですよね」
ハハハとデボラさんが笑った。
「まあ事実だけどね。あいつには殺されるだけの理由があったし、そのことはあいつも分かってるさ。
子供だから一言言わずにいられないだけさね。前にも似たようなことがあったけど、親父と違って分別はある子だよ。
それに、あたしもエリックも負い目には感じてるんだ。どんな理由があれ、あの子の親父を殺したのはあたしらだしね」
「なら、いいんですけど」
デボラさんがニヤリと笑った。
「大丈夫って言えば、あんたはいいのかい?」
「え?」
「部屋割りさ。エリックと一緒の方が、よかったんじゃないのかい?」
「うえっ!!?あ、いや……そういう、関係でもないですし……」
「もう、お互い素直になんな。何か昔のあたしと旦那を見てるみたいだよ」
「そうなんですか?」
デボラさんが遠い目をした。
「旦那は無口な人でね。想いを口にするのが下手な人だった。あたしもそんなに器用な方じゃなかったからね。くっつくまでには色々あったもんさ。
あんたらが互いを気にしてるのは、分かりやす過ぎるくらい分かりやすいよ。そういう関係になった方が、この先を考える上ではいいと思うんだけどねえ」
そうなんだろうか。彼の気持ちも少しずつ見えてはきたけど……
そもそも、私自身の感情がよく分からない。彼には恩もあるし、悪い人でないのもさすがに分かってる。
ただ、男女の仲になるのがどうなのか……いい加減、彼に訊くべきなんだろうか。
「まあ、あんたらのことだし、野次馬が口を挟むことでないけどね。それに、あたしらにとって恋やら何やらよりも、今は優先すべきことはある」
「……そうですね」
布団を被り、目をつぶる。彼は今、どう思っているんだろう。
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