魔王と魔法使いと失われた記憶
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479: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/27(火) 19:58:33.97 ID:kXxvSfJ/O


「「何!!?」」


俺とデボラの声が重なった。カルロスの女の話なぞ微塵も興味はないが、ユングヴィが絡んでいるなら話は違う。何故なら、その先には……

「アヴァロン大司教絡みか?」

「知らないよ。そもそも何でそんな小娘を狙うんだい?娼婦への勧誘にしろ、ユングヴィは色事は禁忌のはずだし」

「もう少し訊いてみましょうよ。どんな子なんですか?」

プルミエールが真顔になる。カルロスの顔が赤くなった。

「そっ、その……歳は16、7ぐらいだと思う。名前はメディア。深い緑の髪で、翠色の目をしてる。小柄で、少し胸は大きく……」

「おっぱいにゃ!!」

ゴツン、とデボラが拳骨をシェイドの脳天に振り下ろした。「酷いにゃぁ……」と奴が頭を抱える。

「続けな」

「はにかんだ笑顔が、とても美しい子なんだ……まるで、花のような……。きっと彼女も、俺のことを……」

シェイドが頭をさすりながら起き上がる。

「いたたた……本当にお姉さん、容赦ないにゃあ。でもそこが好きだにゃ。
で、ちょっと気になることがあったにゃ。『緑髪』って言ったにゃ?エルフじゃないにゃ?」

「……ああ、うん。そうだ」

「『女神の樹の巫女』の昔話、知ってるにゃ?」

俺とプルミエールは首を振る。デボラだけは「ああ、あれかい」と手を静かに叩いた。

「ロックモールに伝わる御伽噺だね。女神の樹から巫女が遣わされ、出会った男と恋に落ちるって話か。
しばらく一緒に幸せな時を過ごすけど、干魃が起きて急に巫女は姿を消し、雨と共に二度と現れなかったっていうよくある話さ。それと一体、何の関係があるんだい?」

「それ、実際にあった話を元にしてるにゃ」

「……は??」

「今から150年ほど前に、緑髪の少女がロックモールに現れたにゃ。彼女は万病を治す癒し手だったとされてるにゃ。そして、テルモンのロックモール総督と恋に落ちたにゃ」

「何でんなこと知ってるんだい?」

フフン、と得意気にシェイドが鼻を鳴らした。

「ご主人の蔵書は、結構目を通してるにゃ。それぐらいでないと、ご主人の跡は継げないにゃ」

そうだ。こいつはこう見えて魔術師としてはかなり能力が高い。家事は料理以外まるでできないが、ジャックが手元に置いているのはそういうことだ。
ジャックが整理整頓できないのもあるが、彼の家が散らかっているのはこいつが魔術書を乱読しているからに他ならない。
戦闘能力自体も高いが、地頭だけならこの中でも間違いなく一番だろう。

「話を続けるにゃ。御伽噺の通り、干魃があって少女は消えたにゃ。違うのは、その後にゃ。実は2人には子供ができていて、癒し手としての能力からその娘はユングヴィで高位まで登りつめたらしいにゃ。
これはご主人の『ロックモール史書』に書いてあった話にゃ。そこそこ信憑性はあるにゃ」


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