魔王と魔法使いと失われた記憶
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445: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/21(水) 19:13:55.64 ID:mjsf9+/tO

プルミエールが思わず大声をあげた。肌の色は白く、長い耳もないが、それは間違いなくあいつだ。

「馬鹿が、起きるだろうがっ」

「でも、ここって娼館でしょ?何で女性の……彼女が」

「娼館に女でも来ることがないとは言えないが……そうか、相手がエルフならあり得る」

「え?」

「エルフには両刀が少なくないからな。娼婦なら、当然対応できるはずだ」

そして、ここまではリリスは正気だったことも分かる。恐らく、「シェリル」の支配下に置かれたのはこの時だ。

『さすが、モリブスの『魔姫』。聞こえに違わぬ美しさですわ』

『お褒めに頂き光栄です。……にしても、女性のお相手は数年振りです……上手くできるかしら』

『うふふ。『普段通り』でいいのですよ?』

そう言うと、「シェリル」は彼女に口付けた。舌を挿れられたのが、すぐに分かった。「憑依」されたか。
なるほど、花街ばかりが「シェリル」に狙われているわけだ。自然に、魔法の発動条件を満たせるのだから。

「切っていいぞ。いつまで戻せばいいのかは、大体分かった」

「……うん……えっ」

プルミエールは「追憶」を続けたままだ。水晶玉の中では、2人の女が絡み合い始めた。さっきと違って声は熱っぽく、本気なのが分かる。

「……女同士の睦み合いに興味があるわけじゃないだろう?」

「いや、違くて……」

「シェリル」の股間からは、男のそれが生えている。エルフにはそういう魔法があるらしいから、それ自体に驚きはない。
プルミエールが驚いていたのは、その右腕だ。昨日は手袋で気付かなかったが……これは。


「義手か」


「うん。でも、これって……」

「……『秘宝』?」

そうだ。肘から先が、全て銀色の金属になっている。こんな精巧なものを作れる職人がいるのだろうか?
だが、合点が行く所もある。あの重そうな「エオンウェ」を片手で軽々扱える時点で、尋常ではなかったのだ。

「秘宝」とは、この世には有らざる力を、使用者にもたらすものであるらしい。「遺物」が武器や防具の類なら、「秘宝」はその道具版だ。
ただ、遺物以上にその存在は知られていない。俺もその存在は御伽噺の中にしかないと思っていた。
ジャックは恐らく色々知っているのだろうが、俺が「秘宝」の実物を見たのはアリスの「バイク」が初めてだ。そんなものが、そうゴロゴロあるとは……

水晶玉からは「お姉様、お姉様ぁ……!!」と喘ぎ泣く声が聞こえる。これ以上は俺も変な気分になりそうだ。

「……止めてくれ」

プルミエールは顔を赤くしながら頷いた。アリスなら、何か知っているはずだ。あの女も、謎が多過ぎる。



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