341: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/04(日) 19:37:17.86 ID:KRGt/NcrO
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「……ふう」
修練が一服し、俺はベッドに身体を投げ出した。プルミエールはというと、部屋に戻るなりしゃがみこんで動かない。
それも当然だろう。高いマナ濃度の下での魔力展開。それに加えて筋力と持久力を高めるための運動。
俺の場合、それに加えて庭でランパードとの地稽古までやらされている。相当な使い手であるはずのランパードすら、最後は碌に動けなくなっていた。
1時間の休憩後は夕食、そして家事だ。この家事がまた地味に堪える。
「……大丈夫、か」
「ぜ、全然、大丈夫じゃ、ない……ベッドにすら、辿り着けない……」
俺は力を振り絞り彼女に肩を貸した。フラフラになりながら彼女を寝かせる。
「……あり、がと……でも、力が、抜けてく……」
「肝心なのは体力とマナの使い方だ。無駄なく使わないと、すぐに衰弱するぞ……。
寝ている間もマナの濃度は上がっていく。身体に、効率のいい使い方を、身体に叩き込ませろ」
「そんなことを、いっても」
「……仕方がない」
俺はザックから瓶を取り出した。「霊癒丸」を1粒取り出し、歯で半分に噛み切る。……酷い苦味と刺激臭が口に拡がった。
半分は無理矢理飲み込み、もう半分を彼女の掌に渡す。
「飲め」
「え」
「飲まんともたんぞ」
プルミエールはなぜか躊躇している。顔が妙に赤い。
「……不味いのは我慢しろ」
「そ、そう……でも、これって、あの……」
「何を躊躇っている」
プルミエールは意を決したようにそれを飲み込んだ。「うえ」という呻きが漏れる。すぐに血色が良くなってきた。
「……凄い。酷い味だけど」
「元々これはジャックの薬だからな。前の時も使っていたものだ。半粒だけでも、疲労回復に十分な効果はある」
「ありがとう……でも、これって貴重なものなんでしょ?」
「これはジャックからもらったものだ。まあ、多少の補充は利くはずだ」
「そう……」
また顔が赤くなっている。俺の顔も、つられて熱くなっているような気がする。
……私情を挟まないと、俺はこの旅を始めた時に決めていたはずだ。ここまで、情に脆くなっていたのか?
俺は頭を振る。いかん、疲労のせいで考えがおかしくなっている。
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