魔王と魔法使いと失われた記憶
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342: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/04(日) 19:38:02.45 ID:KRGt/NcrO
窓の外を見た。空は茜色に染まり始めている。モリブスの乾いた風が、頬に当たった。

「……ん?」

バルコニーに、何かが見えた。……黒猫?それはまるで、部屋の中を覗き見ようとでもしているかのようだ。
シェイドか?いや、あいつも同じような修練を受けている。覗きをする気力なぞあるはずもない。
とすれば、今朝の黒猫か。……どこか引っかかる。

「プルミエール、ちょっと来い」

「え?」

黒猫を見るなり、彼女の顔から血の気が引いた。

「あれって……」

「やはり、今朝の猫か」

「多分……でも、気味が悪い」

やはりプルミエールも同じことを考えていたようだった。あれは不自然だ。

「エリザベートやランパードの猫か?」

「違う。今朝来たのは三毛猫って言ってた。黒猫じゃない」

「となると……別のエルフによるもの、ということか」

「……そうなるわ。エリザベートたちも認識してると思う」

嫌な予感がした。やはり、アヴァロンはこちらを監視しているのか?ジャックがいるとはいえ、ここも安全ではないのか。

「ジャックに言った方が良さそうだな」

「その必要はない」

いつの間にか、ジャックが部屋にいた。その表情は険しい。

「知っていたのか?」

「ランパードから話は聞いた」

その後ろからランパードが現れた。

「すまねえな。どうもありゃ、うちのもんらしい」

「お前が『草』の元締めじゃないのか?」

「そうだ。が、前にも言ったがトリスも一枚岩じゃねえ。女王とは別の指揮系統が存在する。
俺も表向きはそっちの命を受けてたが、どうにも裏切りに気付かれたらしいな」

「何だそれは」

「知ってるかどうか分からねえが、トリスの女王は政(まつりごと)はやるが行政には参画しねえ。この長が司祭長のジェラルド・ヴァレンチンだ。
ジェラルドは女王の『番』の一人だが、政略上のもんで夫婦関係はない。で、トリスの実権を握りたがってる。所詮は小物だが」

ジェラルド・ヴァレンチンか。名前は聞いたことがある。権力欲は強いが、臆病な男であるらしい。

「マルガリータ女王に弓を引けるような男でもないだろう?いくら他国と歩調を合わせるにせよ、そっちの方が立場が強いんじゃないのか」

「まあな。しかもエリザベートも俺と一緒にいる。それを承知で喧嘩を売るなんてことはできねえはずだ。
だからこそ気になる。何のために偵察しているのか」

「ここの守りは?」

ジャックが窓の外を見た。もう黒猫はいない。

「基本、変なのが来たらすぐに分かるはずだ。それに、俺の力量を知っていたら下手な手は打てない」

「……とすると?」

「手を出しているのはジェラルドではない可能性があるな。あるいはただの猫か。心当たりは?」

「猫に心当たりはねえな。他にちょっかいを出してきそうな奴……」

数秒考えた後、ランパードの顔色が変わった。


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