340: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/04(日) 19:36:40.11 ID:KRGt/NcrO
エリザベートが手を挙げた。
「ちょっと、いいですか?貴方自身の身の安全は」
「それは心配なか。な、ジャック」
「基本的にお前が害される心配は薄いと思ってるが、過信は禁物だぞ?相手は『六連星』だ、何をしてくるか分からん」
「それもそうたい。ま、気をつけとくっちゃ」
そういうとベーレン候は立ち上がった。そして霞のように消えていく。
「「……消えたっ!!?」」
「どうしてあの人は普通に帰らないのかねえ」
驚くプルミエールとエリザベートをよそに、デボラが肩をすくめた。俺もベーレン候とは数えるほどしか会っていないが、ほぼ毎回こうだ。
「用心深いんだよ、あいつは。あの図体でな」
「転移魔法、じゃないですよね……」
「いや。そもそも、さっきまでここにいたのはジョイスの『分身体』だ。あいつはああ見えて俺の同期でな。幻影魔法では右に出るものがいない。
精神感応術はむしろおまけみたいなものだ」
そうらしい。父上とも知己だったと聞く。涙ながらに想い出を一晩中語られたこともあった。少々暑苦しいが、嫌いな人物ではない。
エリザベートが首を傾げる。
「ということは、本人は別の所にいるわけですか」
「ああ。それは俺にも分からない。クドラク……ファリス・エストラーダが父の政敵である奴を狙わなかったのはそういうことだ。
何せどこにいるのかすらよく分からんのだからな。とにかく、これで準備が整ったというわけだ」
ニヤリとジャックが笑った。
「また、あれか」
「それが一番効率がいい。今回は濃度をさらに濃くするぞ。その上で、幾つか負荷をかけていく」
2年前のことを思い出し、いささかうんざりした。24時間、体力が削られ続けるのは俺でもさすがに厳しい。
「こむ……プルミエールやエリザベートにも、同じ内容をやらせるのか?」
「このぐらいしてもらわんとな。じゃあ、行くぞ」
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