339: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/04(日) 19:36:09.76 ID:KRGt/NcrO
苦笑するデボラにベーレン候が笑った。エリザベートは少しむくれている。
「……まあいいですけど」
「にしても、トリスも絡んできたのは驚いたたい。あのマルガリータ女王の考えることはよう分からん」
「それはお母様に言ってくださいます?」
「それもそうっちゃ。まあ、もう魔族だけの問題じゃなかね」
ジャックが頷く。俺も感じ始めてはいたが、これは単に魔族を差別から解放するための闘争ではない。もっと根の深い何かだ。
俺とプルミエールが「サンタヴィラの惨劇」の真実を明らかにすることにどんな意味があるかは分からない。ただ、それが北ガリアの勢力図を一変させる何かに繋がり得るのは、もはや疑いがない。
だからこそトリス王家は動いているのだろう。そして、南ガリアとの交易で主導権を確立したいモリブスもだ。
「……どういうことなんですか?」
プルミエールの言葉に、ベーレン候が「うーん」と唸った。
「俺も正直なところ全て分かってるわけじゃなかよ。
ただ『六連星』が動いたということは、北ガリアの中核国であるアングヴィラ、テルモン、イーリスにとっては不都合ってことなんは間違いなか。ロワールが何考えとるかはちと分からんけど。
言ってみればこれは、覇権を巡る争いになりかねんわけたい。違うか、エリザベート姫にランパード卿」
「俺も全貌を聞いたわけじゃねえぜ。ただ、女王は何かを感じ取ってるな」
ランパードの目がエリザベートに向く。彼女も首を縦に振った。
「お母様の『千里眼』が何を見たかは知らない。でも、それなりの根拠がなければこんなことはしないです」
「やろ?俺としては南ガリアとの交易の邪魔にならなきゃいいんよ。ただ、イーリスが土足でこちらの庭を荒らすんなら考えがあるっちゃ。
まあ、表立って喧嘩売るわけにもまだいかんけど、協力はさせてもらうつもりたい」
プルミエールが頭を下げる。
「ありがとう、ございます」
「ええって。ただ、モリブスという国としてあんたらを保護するにはイーリスの……アヴァロン大司教の関与を示す証拠がなか。
それに、あんたらも知っての通りこちらも一枚岩じゃないけん。ラミレス家やゴンザレス家は元より親テルモンや。連中の動きを抑えるには、然るべき何かが要るけん」
「それは俺も既にこいつらに伝えている。とりあえず、こいつらが力を付けるまで7貴族の残りと無頼衆を押さえてくれ。時間はそうかけさせん」
「了解っちゃ」
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