魔王と魔法使いと失われた記憶
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315: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/28(月) 19:56:35.65 ID:YA6smyVZO
「まずプルミエールには『追憶』を磨いてもらう。『追憶』の難点は音声再生ができないという点だ。どういう経緯でネリドとエストラーダが消されたか分かれば、アヴァロンが主犯だと確定できるはずだ。
そして、その上でアヴァロンを捕縛する。そのためにはエリック、お前の力が必要だ」

「……殺すのではなく、捕縛?」

「『死人に口なし』だろう?それに、アヴァロンを生かしておかないとエリザベートの『憑依』を使ってネリドたちの居場所を探ることもできん」

エリザベートの顔色が真っ青になった。

「ちょ、ちょっと待ってください!?そんなことできるわけが……第一、それってもろに外交問題……」

「イーリスの大司教がモリブスの大司教を害した時点でもう外交問題だろう?それを証明した上でなら、風当たりも少なかろう。
イーリス王家がどういう反応を示すかは知らんが、正義は我にありということだな。
あと、ついでにお前も鍛えるからそのつもりでいろ。条件次第で誰にでも『憑依』できるようになるはずだ」

トクトクと瓶からお酒を注ぎ、ランパードさんがニヤリと笑った。

「これを奇貨に一気に引っ掻き回すつもりだな」

「そういうことだ。まあ、ネリドやエストラーダが生きているとは思わん。ただ、主犯を捕まえれば少なくともモリブスでは堂々と動けるようにはなる。
アリスがどれぐらいの時間を作ってくれるのかは知らないが、その間にアヴァロンを捕まえるだけの力量を付けさせよう。多少の無茶はするが」

「無茶?」

「それは明日のお楽しみだ。じゃあ、飯を済ませてとっとと寝るぞ」

「ん?部屋はどうすんだ。掃除して大分広くはなったが」

ジャックさんの家は存外に広かった。使われていなかった客間が3つあるから、この人数が泊まることは問題ない。
ランパードさんが言っているのは、部屋割りのことだろう。普通に考えたら男女で分かれるのだろうけど……

「俺は御免被る。エルフと一緒というのはな」

嫌そうな顔をして魔王が言う。……また始まった。いい加減心を開けばいいのに。

「おいおい、男女が一緒ってのは……」

「……今更それ言います?」

エリザベートが頬を膨らませた。彼女も反論するのはちょっと意外だ。

「え」

「普通に私とビクター、プルミエールとエリックでよくないですか?デボラさんは余っちゃいますけど」

「あ、私はお邪魔虫なんで1人で寝るさ。そこのエロ猫が夜這いに来たら蹴り飛ばすつもりだけどね」

「に゛ゃ!!?そ、そんなことはしないにゃ?」

シェイド君が叫んだ。……あ、そのつもりだったんだ。ジャックさんがはあ、と息をつく。

「前科があるだろうが。まあ、安全のためにもその組み合わせが妥当だな。くれぐれも盛るなよ」

「……?」

「するわけがないだろう」

魔王は険しい表情だ。彼とはもう何日も一緒の部屋で寝ているけど、男性としては驚くほど紳士だというのは知っている。……会話もろくにないのだけど。

エリザベートを見ると、「何のことですかねぇ」と明後日の方を見ている。ランパードさんは「ハハ……」と苦笑していた。

「……ん?」

魔王が私の袖を引っ張った。

「寝るぞ」

「う、うん」


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