魔王と魔法使いと失われた記憶
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307: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/24(木) 21:33:31.67 ID:HSZ2OTe3O


「「「???」」」


猫が喋る。そしてクルッと宙返りすると、12、3ぐらいの少年の姿になった。半ズボンに半袖で、褐色の肌をしている。

「な゛??」

「やはりいたか、『シェイド』」

ニシシ、と笑うと奴はプルミエールに抱き付いた。

「えっ!!?」

「んー、やっぱり美人さんだにゃ。このおっぱいに埋もれ……」

スリスリとプルミエールの胸に頬擦りする奴に、ゴスッ、俺は拳骨を脳天に食らわす。「あだっ」っとシェイドは飛び退いた。

「何するにゃ!!このチビ!!」

「お前もだろう?相変わらず女癖の悪い奴だな」

「おっぱいは正義にゃ!!それに、ボクの可愛さに落ちない女の子はいないにゃ!あ、あっちにも狐耳のお姉様がいるにゃあ!」

シェイドはデボラに向けて駆け出す。それを彼女は前蹴りで吹っ飛ばした。

「あぐ……暴力反対にゃあ……」

「頭の弱いガキは嫌いだよ。というか何だいこいつは。亜人かい?」

「いや、こいつは……」

車椅子の音がする。ジャックだ。

「シェイド、飯の支度をサボって何油を売ってる?」

「あ、御主人!!ただいまにゃ、買い出しは終わってますにゃ」

「女漁りの間違いだろ?ったく、お前が仕事しないから家がいつまでたっても片付かん」

「あのぉ、この子は……」

「俺の召し使いだ。『偽猫』を基にした魔術生命体だな」

「にゃ!!シェイド・オルランドゥ21歳だにゃ!絶賛お嫁さん募集中にゃ!!」

「ガキが何言ってやがる。せめて召し使いとしての仕事を最低限できるようにしろ。飯はどうした?」

「あぐ、今から作りますにゃ……ちょっとお待ちを」

そう言うとシェイドはパタパタと厨房に向けて駆け出した。

「何だいありゃあ。そもそも21って」

「13年前に偽猫を捕まえてな。俺の身の回りの世話をするためにアリスが残した。偽猫としての年齢を足すとあんな感じだ」

「にして騒々しい奴だねぇ……」

デボラが眉を潜めている。プルミエールは呆気に取られた様子だ。

「……人に化けるんですね……」

「『人化術』だな。あれは学会にも発表されてない。ユングヴィの奴らが五月蝿いからな」

ジャッ、ジャッと鍋を振る音が聞こえる。香ばしいスパイスの薫りが漂ってきた。やっと飯にありつけそうだった。



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