魔王と魔法使いと失われた記憶
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293: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/21(月) 15:24:55.52 ID:MsiqRxPqO
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「ジャック先生!いるかい?」

馬で走ること半刻ほど。追っ手に追われることもなく、私たちはジャックさんの家に着いた。
デボラさんの呼びかけに、気だるげな声が中から返ってくる。

「デボラか。久し振りだな。組は順調か?」

「まあね。今日はそれどころじゃないんだ。客人を連れて来……」

「分かってる。エリックとプルミエール、そしてお前は入れ。出歯亀エルフとその主人はまかりならん」

ランパードさんがはあ、と溜め息をついた。

「とことん嫌われてんなあ。何でそこまで嫌うかねえ」

「単純に入れんからだ。俺の部屋は客を呼ぶには狭すぎる」

確かに、ジャックさんの部屋はただでさえ散らかっている。魔導書ばかりで足の踏み場もない。
さらに、彼は足が不自由だ。玄関先まで出てくるのも一苦労のはずだ。
私たち3人で多分ギリギリで、5人も入る余地は確かになさそうだった。

エリザベートはというと、平然とした様子でニコニコしている。

「ま、会話には参加できませんけど様子は見れますし。ジャックさん、そのぐらいは許してくれますよね?」

「お前がエリザベートだな。……好きにしろ」

ジャックさんの言葉を聞くと、エリザベートが私の背中に手を軽く当てた。

「よしっと。これで視界は共有できたよ」

「え?」

「『憑依』の応用。実はあれ、人間相手にも使えちゃうんだよね。
余程縁が強いか、相手の魔力が自分を下回っている場合にしか使えないんだけど」

「エストラーダ侯の所で気を失ったのって、まさか」

「そ。嘘の証言者に成りすまして3人を引きはがしたってわけ。とにかく、会話の内容とかは私にもちゃんと伝わるから安心して」

これが彼女の研究内容なのだろうか。少なくとも、こんな魔法は聞いたことがなかった。

「まあ、一応外での見張り役も必要か。それは俺たちがやっておくから、お前さんたちは中でジャック・オルランドゥと話してきな」

「そゆこと。あ、これアリス教授からの手紙ね。何が書かれてるかは知らないんだけど」

エリザベートは鞄から封書を取り出した。ごく普通の手紙みたいだ。

「分かった。これを渡せばいいのね」

「うん。じゃ、よろしくねぇ」


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