292: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/21(月) 15:24:09.71 ID:MsiqRxPqO
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……
…………
トスッ
「……ここは!?」
着いた先は、ワイルダ組の応接間だった。部屋を掃除中と思われる組員が、目を丸くしている。
やがてエリザベートや魔王、そしてランパードさんも天井から「落ちてきた」。エリザベート以外の2人は、何が起きたのか理解できないという様子だ。
「……どういうことだ?」
「魔術具『転移の球』を使いました。転移できる距離には制限があるし、事前に指定した場所までしか戻れないけど、転移魔法と違ってすぐに発動するの。緊急避難にはもってこいの道具」
冷汗を流しながらエリザベートが言う。ランパードさんは「おいおい……」と呆れ顔だ。
「そんなもん持ってたのかよ。そもそも、何でそんなものを?」
「アリス教授に何個か持たされたの。きっと必要になるだろうからって」
教授は私たちに起きていることをある程度知っているのだろうか。彼女に会って話してみたいけど、今はただ感謝しかない。
部屋にデボラさんが入ってきた。
「あんたたち……いつの間に??」
「ごめんなさい。多分、『六連星』と遭遇しそうになったので逃げてきました。
ここに私たちが長居するのも危険です。すぐに移動します」
深々と頭を下げるエリザベートに、デボラさんは思いもよらないことを言った。
「ジャック先生の所に行くんだろ?あたしも連れてきな」
「……え?」
「ちょいとあたしとその『六連星』とは訳ありでね。部外者というわけでもないのさ。
早くここを離れた方がいいんだろ?馬ならすぐ出す」
「いいのか?昨晩のことが知られたら、他の組員にも危害が……」
魔王の言葉に、デボラさんが苦笑する。
「まあ、知らぬ存ぜぬで通すさ。それに、あたしらの庇護者はベーレン侯だからね。
いかにそいつが偉かろうと、モリブスの今の統領であるベーレン侯相手に簡単に弓は引けないさ。
ラファエル!!馬5頭、とっとと準備しなっ!!」
「えっ?私、馬を1人で乗ったことなんて……」
「大丈夫、純粋な馬じゃなくってユニコーンとの混血種さ。人の言葉も多少は解するから、子供が乗ってもちゃんと走る」
デボラさんを先頭に本部を出る。厩の前には、もう5頭の白馬が用意されていた。
「義姉さん、お気をつけて」
「ああ。ウィテカーのこと、頼んだよ」
「無論す」
そうラファエルさんに言うと、デボラさんが馬に乗った。
「良く聞きな。目的地はジャック・オルランドゥ公の家だ。全速力で頼んだよっ!!!」
「ヒヒーン!!!」と、返事をするかのように5頭が嘶く。私が何とか鞍の上に乗ると、馬は物凄い勢いで走り出した。
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