魔王と魔法使いと失われた記憶
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289: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/21(月) 15:21:48.00 ID:MsiqRxPqO
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「『六連星』?」

エリザベートが唇に指を当てた。

「あまり声を出さないでください。近くにはそれっぽいのはいないけど、誰が聞いているかは分からないから」

「……分かった。そんなに危険なの」

「世界各国で最も腕の立つ武芸者や魔法使いによって構成される、独立治安部隊。
『サンタヴィラの惨劇』を機に作られたと聞いてるわ。第二の『魔王ケイン』を生み出さないように……ということになってる。
全員が『特級遺物』持ちという話よ。そして、貴女を襲ったデイヴィッドという男もその一人」

あの男か!!言われてみれば納得だ。背筋に冷汗が流れる。

「そんなのが、今モリブスに……」

「という話。そして、エストラーダ侯とその邸宅を消したのも、多分『六連星』の誰かね」

「……ちょっと待って。独立治安部隊って言った?」

「うん。貴女の『追憶』は、国際秩序を根本から覆しかねないと思われてるんじゃないかな。
特に『サンタヴィラの惨劇』の真実が明らかになると、とても各方面に都合が悪いみたい」

「真実??」

エリザベートは、警戒するようにきょろきょろと辺りを見た。

「私もそこはよく分からない。でも、『サンタヴィラの惨劇』が単なる魔王ケインによる暴虐の結果でないのは確かだと思う。
だから、私たちは貴女たちを支援してるの。真実を明らかにするために」

「何でトリスはそこまで真実を求めてるの?」

「……うーん、よく分かんない。お母様は分かってるのだと思うけど」

彼女は肩をすくめる。

「でも、私が貴女を何とかしたいというのも本当よ。長年の友達の力になりたいって、当たり前じゃないですか」

「……ありがとう」

新市街が見えてきた。エストラーダ侯の邸宅近くには、野次馬が群がっている。

「うーん……2、3人、あの中にそれなりの魔力の人間がいますねぇ」

「追っ手?」

「多分」

魔王とランパードさんは、私たちの後方20メドぐらいを歩いている、らしい。
私は変装しているけど、おおっぴらにここで「追憶」を発動するわけにはいきそうもなかった。

「どうするの?」

「ん、ちょっとここは私に任せて。少し外すけど、すぐに戻る」

そう言うと、エリザベートは野次馬の中に入っていった。そして言葉通り、1分もしないうちに戻ってくる。

「準備おしまい。じゃあ、今からちょっと気を失うから、警戒とかよろしくねぇ」

「え、気を失うって、ちょっと!!?」

そう言うと、彼女は私の胸の中に倒れ込んだ。魔法か何かを使ってるんだろうけど……この間に何かあったらどうするの?

2、3分ぐらいしただろうか。急にエリザベートが目をぱちくりさせた。

「エリザベート??」

「んあ……おはよ」

「おはよって……大丈夫なの?」

「うん。とりあえず、邪魔者はもういないよ」

「え?」

「へへー。ちょっとね。じゃ、エストラーダ邸に行こっか」

何をしたのだろう?随分と自信ありげだけど。
とりあえず野次馬をかき分け、先へと進む。そこで目にしたのは、信じがたい光景だった。


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