魔王と魔法使いと失われた記憶
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290: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/21(月) 15:22:48.02 ID:MsiqRxPqO


「……本当に、何もない」


そう、「何もない」。まるでそこが前から更地だったかのように。エストラーダ邸があった痕跡は、跡形もなくなっていた。

縄で警察が通行制限をかけている。元々家があった所で、彼らが何か色々調べているのが見えた。

「ここで『追憶』を使っちゃう?」

「……ここからだと、門があった場所の『記憶』までしか分からないわ。でも、誰がここを訪れたぐらいは分かる。その後、どうやって家が消えたかも」

「了解。じゃ、お願い」

幸い、いつ頃消えたかの情報はある。私たちに絡んできたあのオークが、デボラさんの命令でちょうどエストラーダ邸を監視していたからだ。
彼の説明によると、「一瞬目を離した隙に、光と共に消え去った」らしい。転移魔法の存在は知ってるけどそんな大規模なものは聞いたことがないし、大体転移魔法は光なんて発することはない。つまり、私が知らない何かの魔法で消したのだろう。

私は小声で詠唱を始める。5分ほどして、水晶玉に邸宅が消える10分ほど前の「記憶」が映し出された。

「……これといって変なことは……あ」

ユングヴィ教団の司教らしき人が2人、門番に話しかけているのが見えた。

「これ、声は分からないの?」

「そこはこれからの改善点。でも、訪問者が分かっただけでも随分違うかも」

2人のうち1人は太目で髪が禿げ上がった初老の男だ。もう一人は……細い目で白髪の中年男性のようだ。
禿頭の方はモリブスのユングヴィ教団によくある服だけど、白髪の方はあまり見たことがない服だ。長袖で、南国には似つかわしくないようにも思える。これは確か……

「イーリスのユングヴィ教団の服だね。イーリスの原理主義派とモリブスの世俗派は、対立してたはずだけど」

訝し気にエリザベートが呟く。

態度からして、禿頭の方が白髪の男に気を遣っているようだった。この男が、「六連星」?

そして、2人が邸宅に入ってちょうど10分ぐらいした時に、異変が起きた。


「……何これ!!?」


光の柱が、突然空から降り注いだ。それは半球状に広がり、エストラーダ邸を包み込むと……光と共に、それは消えた。


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