168: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/30(日) 20:49:05.03 ID:GOi8ToA6O
#
「どういうつもりなんですか」
開口一番、私は木陰にいたランパードさんを問い詰めた。バツが悪そうに頭を掻きながら、彼が答える。
「ジャック・オルランドゥは、エリック同様俺らを信用してないからな。情報の共有のためには仕方なかった」
「でも盗み聞きなんてっ!?」
「怒るのは無理もねえ。ただ、繰り返すが『俺らと嬢ちゃんたちの利害は一致している』。
俺がこの件について嬢ちゃんたちに不利益になるようなことはしねえ。それだけは誓って言える」
「じゃあ他の件では敵に回るってこともあるんじゃないですか?」
「かもな。ただ、俺の有用性を知っているからこそ、ジャック・オルランドゥは情報を『敢えて漏らした』」
「え」
ランパードさんの目が、一瞬だけ鋭くなった。
「狸はどっちだって話だぜ……食えねえ奴だ。
まあ、俺にエリック・ベナビデスの真価は教えたくないらしいな。『加速』以外に何があるのかは知らねえが。
俺はクドラク討伐が成功すりゃそれでいい。もはやファリスがクドラクだというのは確定的だ。施術日はいつにする?」
「……どちらにせよ、告げたら」
「すぐにファリスは動くだろうな。せっかくだから、施術は明日にでもしておくか。つまり、今夜決着が付くだろうな」
「その前に、いいですか」
「ん?」
「一度、彼女と話してみたいんです。魔王の所に行った後、エストラーダ邸に同行させてくれませんか」
私はまだ迷っていた。ファリスさんがクドラクであるのは間違いない。
でも、目の前で見たクドラクのあの邪気と、儚いファリスさんの印象は、未だに全く重ならないのだ。
もし凶行が「遺物」のせいなら、彼女は殺されるべきじゃない。
救えるならば、救いたかった。たとえ魔王に「甘い」と罵られようと。
「……分かった。とりあえず、4の刻にまた会おうぜ」
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20