151: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/27(木) 12:38:05.50 ID:IcevcAFHO
「ファリス、トリスから医術士が来た。報償金の話を聞いたようだ。今日の具合は」
「気分は、そこまで悪くはありませんわ」
ふわり、と少女が笑った。多分、私より少し若い。随分と痩せてしまってるけど、貴族の女の子らしい気品のある美しさだ。
ゆったりとした長袖の服を着ている。手首の辺りは、見えない。
「そうか……お前の母親も早く逝ってしまった……お前を喪うことは、耐えきれん」
「大丈夫ですわ。御父様より早く逝くことは、しませんもの。この方たちが、お医者様ですか?」
「そうだ」
ランパードさんが、再び跪く。
「トリス森王国が一級医術士、ビクター・ランパードです。どうかお見知りおきを。こちらが、助手の」
しまった。本名を伝えるわけにはいかない。偽名なんて、考えてなかった。
「……プ、プル。プル・レムです」
「変わったお名前ですのね。エルフって、初めて見ましたわ」
ウフフ、とファリスさんは微笑む。コホコホと、軽く咳をした。
「大丈夫かっ??」
「え、ええ。……コフコフッ。このぐらいは、どうとでも」
「少し診させて頂きます」
ランパードさんが手を彼女の頭に当てた。厳しい表情をすると、「失敬」と今度は胸に手をやる。
「こ、こらっっ!!何と破廉恥……」
「肺の中を見ているのです。今度は腕を」
服を捲し上げた。右手首には……何も着けていない。
良かった。やはり魔王の勘違いだった。
そもそも、こんなか弱く、大人しそうな子がクドラクなわけがない。
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