150: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/27(木) 12:37:05.11 ID:IcevcAFHO
5分ほどして、小柄な老人が衛士と共にやって来た。ランパードさんが跪くのを見て、私もそうした。この人が、エストラーダ候か。
「お会いできて光栄です、閣下」
「トリスの一級医術士とは、真か」
「確かに」
老人は衛士が持っていた巻物を読むと「ふむ」と呟いた。
「確かに、マリア・マルガリータ女王の筆跡だ。その女性は?」
「私の助手です。施術を行うなら、助手が不可欠ですから」
「身体を切り裂き、病巣のみを取り出す……か。トリスの施術の話は聞いている。確かに1人では無理な所業だ。良かろう」
邸宅の中に入ると、豪奢な応接室に通された。
「マルガリータ女王は健勝か」
「お元気であります」
「そうか。私と同世代というのが信じがたい……ともあれ、ファリスのことであったな」
「ええ。ご病状、思わしくないとか」
エストラーダ候が溜め息をついた。
「元より身体が丈夫ではなかったが……3ヶ月ほど前から、具合が悪くなってな。特に頭痛が酷いそうだ」
「なるほど、その他の病状は」
「ここ最近は、身体を起こすのもやっとだ。手遅れでなければいいと思っている……」
エストラーダ候は辛そうに俯いている。これが演技とは思えない。
「一度、お嬢様に会わせて頂くことは」
「……無論だ。治してくれるなら、金に糸目はつけん」
彼と共に2階へと上がる。その一室のドアを、エストラーダ候が叩いた。
「私だ。入って大丈夫か」
「……いいですわ」
か細い声が聞こえた。入ると、黄金色の長い髪の少女が身体を起こして窓の外を見ている。
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