148: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/27(木) 12:35:19.72 ID:IcevcAFHO
「……え」
「ここで襲撃があってから数時間後だ。恐らくは恋人同士、どこかの連れ込み宿にでも行こうとしたんだろうが。夜が更けてから歩くのは自殺行為ってことだな」
「嘘っ、まさか……」
私たちが狙われた巻き添えになって?
しかし、ランパードさんは首を横に振る。
「クドラクの餌食になっているのは、要人だけじゃねえ。一般人も普通に殺されてる。お前さんたちが襲われたのは必然だったかもしれねえが、こいつらは違う。
クドラクは、言ってみれば……理性半分、狂気半分の獣のようなもんだ。だからこそ対応しにくい」
「狂気……」
「『遺物』の効果かもな。俺も詳しくは知らねえが、『遺物』の中には精神に影響を与えるものがあるとも聞くからな」
私はデイヴィッドという男を思い出していた。今にして思えば、彼の言動も少しおかしかった。まるで戦闘、いや殺戮を楽しんでいるような……
「とにかく、危なくなったらすぐ退くぜ。……って何をしている?」
「『追憶』を使うんです。確か場所は……この辺りでしたか」
「『追憶』……?現場を映し出す、ということは」
「ええ。何か特徴がないかと」
私は水晶玉を取り出し、詠唱を始めた。時間も場所もほぼ正確に分かっているから、それほど時間は掛からずに済む。
程なくして、魔王が刺された場面が浮かび上がった。暗いけど、街灯の灯りで腕は見える。
「……これが『追憶』か……意外とハッキリ見えるものだな……」
ランパードさんが呟く。突きが迅過ぎて腕が見えたのは一瞬だけど、何回か繰り返し見ているうちにあることに気付いた。
「……あ」
「どうした、嬢ちゃん」
「これを見てください」
私は「追憶」の作動を一旦止めた。水晶玉の映像が固定される。
「……これは」
「ええ。手首に何か着けてます。……アミュレット?」
宝石が幾つかついたアミュレットだ。見るからに高そうなものだけど……
「ファリス・エストラーダがこれを着けていれば……」
「多分、間違いないです」
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