魔王と魔法使いと失われた記憶
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143: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/27(木) 12:31:48.62 ID:IcevcAFHO
「これでよし……と。彼はうちの組の後見人なのさ。旦那とはダチでね。旦那がいなかったら、彼に惚れてたかもしれないねえ」

「それにしても、この魔法……」

「『時間遡行(アップストリーム)』さ。誰にでも使えるもんじゃないらしいけどね。でも、肉体は戻っても、失われた血と体力はそう簡単には戻らない。
いくらエリックが頑強と言っても、薬湯飲ませて1日は寝とかないとダメだね。酒で傷から入った毒は消したけど」

魔王はさっきお酒をかけられたのが余程苦痛だったのか、意識を失っているようだった。デボラさんが緑色の液体を瓶からグラスに注ぐと、彼の枕元に置く。

「意識が戻ったら、こいつを少しずつ飲ませてやりな。にしても……クドラクがそれほど強いとは、ねえ」

「いきなり空間から腕が伸びてきたんです。完全に不意を突かれて……」

「他に気付いたことはあるかい?」

「腕は細かった気がしますけど、それ以外は……」

デボラさんがしばらく黙った。

「……そうかい。もし何か分かったら、あたしらにも教えとくれ。できる限りはする」


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