142: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/27(木) 12:31:14.82 ID:IcevcAFHO
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「デボラさんっっ!!!」
ドアを叩くと、コボルトの男が怪訝そうに私を見下ろした。
「……何だこんな夜に……お前は」
「大変なんですっっ!!!」
男はすぐに魔王の様子に気付いたようだった。
「……すぐに呼んでくる」
上の階から、薄手の服を着たデボラさんがかけ降りてきた。
「どうしたんだいっっ!!?……その傷はっ」
「『クドラク』にやられたんですっっ!!急に、襲ってきて……」
「……入りな。あたしが治療する」
「え」
「怪我の治療には自信があるんだ。狐人の魔力、なめんじゃないよ」
すぐに魔王はベッドに寝かされた。フードの下を見ると、右肩に近い所がごっそり抉れている。骨が見えてないのが不思議なほどだ。
「……酷いね。エリック、意識は」
「一応……ある」
魔王の具合はさらに悪くなっているように見えた。デボラさんは荒縄で傷口の上を縛ると、お酒を持ってきた。
「……え?」
「消毒さ。モリブス南部特産の『テキ』を濃縮したものだよ。痛いけど、我慢しな」
トポトポトポ…………
「ぐああああああああっっっっ!!!!」
魔王が絶叫する。それと同時に、デボラさんが両手をかざした。掌が乳白色に光ると、鮮血で濡れていた魔王の傷口の色が、変わり始める。
「……すごいっ……」
モコモコモコと、失われたはずの肉が盛り上がってきた。治癒術って、こんな感じだっただろうか?
「言ったろ?狐人の魔力、なめんじゃないってね。亜人はオルランドゥには入れないけど、魔法を学べるのは魔術学院だけじゃない」
「まさか、ジャックさんの所?」
額から汗を流しながら、デボラさんが笑う。
数分後に魔王の傷は、すっかりなくなっていた。
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