127: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/21(金) 20:41:29.98 ID:GUtbYzIjO
「……ランパードさん??」
「よう。おお、『エリック』も一緒か」
魔王が腰の短剣に手を掛けた。
「貴様……なぜここに。そして、なぜ俺の名を」
「名前はちと調べれば分かるさ。あと、ここに来たのは偶然だ。信じるかどうかはお前さんたち次第だがな」
「攻撃の意思はない」と言うかのように、ランパードさんが手を上にあげた。
「パッと見だが、そのドレスはテルモンの大量生産品だな。1着せいぜい3万ギラってとこか。
南ガリア産の本物でも20万ギラが相場だが」
「えっ、そうなんですか?」
店主を見ると、「余計なことを言いやがって」とでも言いたげにランパードさんを睨んでいる。
「服買うならこんなボッタ店じゃなく、もうちょいちゃんとしたとこを知ってるぜ、ついてきな」
ランパードさんが私たちを手招きする。後ろで「クソッッ!!」と店主が叫ぶのが聞こえた。
「あっ、ありがとうございます!!」
「いいってことよ。『魔王様』はお気に召さないらしいがな」
魔王が低い声で言った。
「……何故、モリブスにいる」
「言ったろ?『勝手に支援させてもらう』ってな。あと、別件で用事があってな」
「……用事?」
「ああ。『幽鬼クドラク』の調査だ。貴族選が無事終わってくれねえと色々都合が悪い。
で、モリブスから不穏な動きがあると連絡を受けてな。それでここにいるってわけだ」
……この人って何者なんだろう?エリザベートとも知り合いみたいだし、追っ手なのに私たちを殺すどころか協力するとか言っている。
「なるほどな」と魔王が呟く。
「貴様、『草』か」
「『草』?」
ランパードさんが苦笑する。
「いや、ちと違うんだがな」
「妙だとは思っていた。エリザベート・マルガリータと知己であるらしい点からして、ただの男ではあり得ない。
小娘、トリスのエルフは各地に『草』と呼ばれる諜報員を送り込んでいる。恐らく知らないだろうが」
ブンブンと首を振る。そんなの、初めて聞いた。
「草はどこにでもいる。ある者は商人に、ある者は市民に身をやつしている。……一番多いのは娼婦や男娼だがな。多分、こいつは……その元締めだ」
「……さすが魔王だ、なかなかいい推測だぜ。8割は合ってる」
「……何?」
「これ以上は言えねえな。ま、俺が敵じゃねえことは分かってくれ。とりあえず服屋行った後、酒でも飲みながら話そうや」
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