116: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/18(火) 21:21:06.19 ID:8Z5elHuBO
向こうから狐の耳のようなものを付けた女性が男2人とやってきた。男の1人はコボルトで、もう1人は場違いにも思える燕尾服を着た人間の男性だ。
女性は白く長い髪で、扇情的な露出の多い服を着ている。ツンと張った乳房と少し厚みのある唇は、同じ女の私から見ても色っぽい。
お尻から尻尾が何本かゆらゆらと揺れている。……娼婦、じゃなさそうだな。
「あ゛、姐ざんっ!!」
ナイフを抜いて、もう1人のオークが叫んだ。
「何だい、3人がかりで女の子を拐おうとしたのかい?しかも護衛の男に返り討ちとは情けないねえ、恥を知りな。
にしても、地味なようでかなりの上玉だねぇ……何の用があって……あら、あんたは」
狐耳の女性が魔王に気付いたようだ。
「そっちに向かう手間が省けたぞ、デボラ」
「あら、エリックじゃないかい!いつ戻ってきたんだい?」
デボラと呼ばれた女性が笑いながら魔王の手を取った。
「昨日だ。訊きたいことがあってな。にしても、相変わらず躾がなってないな。俺のことも知らん下っ端か」
「南から来た新人さ、すまないねえ。後でキツく言っとくから、機嫌直しておくれよ」
……随分馴れ馴れしい女性だな。彼女の目線が、私に向く。
「で、この娘は?まさか、『これ』かい」
小指を立てた女性に、魔王が呆れたように首を振る。
「……違う。色々こちらも都合があってな。一緒に行動している。
それで、少し落ち着いて話したい。できれば人払いした場所でだ」
「へえ、そっちから褥に誘うなんて成長したじゃないか。あたしなら大歓迎だけど?」
「……馬鹿が。真面目な話だ」
「ごめん、その女性って」
デボラと呼ばれた女性が「へえ」とニヤニヤしながら私たちを見る。
「ああ、こいつは……」
「ごめんねぇ、あたしはデボラ。これでもワイルダ組の組長やってんだ。あんたは?」
……この人が?無頼衆をまとめているのが、女性とは思わなかった。
「私は、プルミエール・レミューです。その……オルランドゥにいたことがあります」
「へえ、魔法使いかい。なるほど……訳ありみたいだねえ」
魔王がデボラさんを睨む。
「お前には関係のないことだ」
「ま、あんたのことだ。言いたくなかったらそれでいいさ。じゃ、組に行こうか」
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