115: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/18(火) 21:19:12.21 ID:8Z5elHuBO
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モリブスの繁華街を通り過ぎ、旧市街に入ると異臭が鼻を突いた。香辛料の香りに生臭い何かやすえた臭いが混じった、酷く不快な空気だ。
街並みもボロボロの建物が目立つ。道行く人たちは皆身なりがみすぼらしく、目がギラギラと光っていた。
……というか、男たちは皆私に視線を向けている気がする。まるで、獣のような……そんな感じだ。
「ビクビクするな、堂々としろ」
「でっ、でも……」
目の前にオークが2人、その後ろにオーガが1人立ち塞がった。
「よう、姉ぢゃん。これがら飯でも食わねが」
「えっ、用事が」
「いやいや、旨い店知ってるだよ。悪いことはしねがらよ……」
下品た笑いを浮かべるオークの1人の首筋に、魔王がナイフを突き付けた。
「死にたいか?」
「てっ、でめえっ……ガキのぐせにっ……!」
そうしている間に、残りのオークが私を羽交い締めにしようとする。魔王は懐から何か取り出すと、それをオークに投げ付けた。
「ぎゃああっっ!!」
オークの肩には投げナイフが深く刺さっている。オーガが一歩、前に出てきた。
「お、おめえ……ぶっと、ばす」
ブォンッッ
拳の風圧が私にも届いた。それを魔王は事も無げに交わす。
「マイカの旦那、やっぢまってくでぜえっ!!」
「幻影の霧」を詠唱しようにも、そんな余裕はなさそうだった。マズいっ。
しかし魔王は、一瞬のうちにオーガの懐に入る。
「あ」
ドグッッッ!!
その瞬間、身長2メドはゆうに超える巨体が……浮いた。
「げぶっっ……」
オーガはその場にしゃがみこんだ。魔王は「ふん」と左拳を見る。右手にはナイフがあるから、刺したわけではないみたいだ。
「喧嘩を売るなら相手を見てやれ、雑魚が」
「だ、旦那ぁぁ?……ごの、ワイルダぐみに喧嘩さ売っで、ただでずむど……」
「何だい、騒がしいねえ」
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