魔王と魔法使いと失われた記憶
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114: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/18(火) 21:17:50.86 ID:8Z5elHuBO


「え??」


少し時間を「巻き戻す」。人の姿は、3人以外にない。なのに、虚空から腕が飛び出している。


……こんなことがあるの??透明になる魔法なんて……見たことも聞いたこともない。


魔王も訝しげに水晶玉を見ている。


「もう一度見せろ」

「……うん」

惨劇が再び映し出される。……私には、虚空から腕が急に出てきたようにしか思えない。

魔王は無言で考えている。10秒ぐらいして「そうか」と口を開いた。

「どうしたの?」

「妙だな。俺も魔法には然程詳しくはないが、仮に『透明化』という魔法があるなら腕だけが実体化はしない。そもそも、ナイフごと直前まで透明にはならないはずだ。
『幽体化』なら魔族に伝わる魔法にあるからそれだと思ったが、幽体になると物理的に物は持てない。透過するからな」

「……だとしたら?」

「さっき見ていて、僅かに空間が歪んでいた。まるで何かに身を隠していて、そこから腕だけが伸びたような……そんな感じだ。
俺の読みでは、魔道具……いや、何かしらの武具によるものだと思う」

「そんな魔道具や武具なんて、聞いたこともないわ」

「俺もない。だが、『遺物』ならできる可能性がある。
つまりは、遺物を持てる立場の人間が彼女を殺している可能性大だ。エストラーダ候は高齢だから、恐らくはその意向を汲んだ誰かによるものだな」

私はゾクンと身を震わせた。「遺物」……あのデイヴィッドという男が持っていたものと、似た何か??

ということは……

「……ちょっと待ってよ?じゃあ、今ここでこうしていること自体が危険じゃないの?
こうやっているのを、後ろから刺されたら……」

「いや、それは多分ないな」

自信ありげに魔王が言い切る。

「どうして?」

「マルチネスを昼間に殺せるなら殺しているはずだ。彼女は街頭での説法も多かったからな。
つまり、夜に襲わないといけない理由があったってことだ。多分、白昼堂々とは使えないのだろうな。あるいは、昼は行動できないか、だ」

魔王が立ち上がった。

「どこに行くの?」

「『無頼衆』の一つ、『ワイルダ組』だ。あそこは俺に貸しがある」



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