45:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:40:40.24 ID:qe4+sBJv0
「ねぇ、マルは死んじゃうのかな?」
震える手でヨハネの手を握りながら、不安げな目で花丸はそう尋ねる。
ヨハネの脳裏にマリーの言葉がフラッシュバックした。
──もうすぐ死ぬ子供だけに見えるそうよ──
ヨハネは一瞬だけ逡巡した後に花丸に微笑みかける。
「大丈夫、私がここへ来たのよ。」
確証なんてない。嘘でもそう言うしかなかった。
気怠そうに呼吸する花丸の頭に持ってきた葛をそっと戴せてあげる。
「ヨハネちゃんの冠、すごく長持ちするね。まるで魔法みたい。」
まるで、あの日の花畑の様に2人の頭は白い花に彩られていた。
「さあ、寝なさい。元気になるように私がここで寝るまで見ててあげる。」
ぎゅっと小さな花丸の手を握ってあげる。
そっと花丸もヨハネのきめ細やかな指を握り返す。
「また、元気になったら遊びに行ってもいい?」
「……勿論よ。」
すっと目を閉じる花丸を見て、ヨハネは必死に泣きそうになるのを堪える。
(お願いします……花丸を、この子を……)
(救ってください……!)
誰に祈るわけでもない。誰かに縋るわけでもない。
それでも、今のヨハネにできることはこれだけだった。
ただただ、ヨハネは祈った。
今にも消えかかりそうな花丸の荒い吐息を受けながら、ヨハネは朝まで祈り続けた。
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