40:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:36:35.14 ID:qe4+sBJv0
眼下に見えるは灯りの消えた空っぽの街。
やいのやいの駄弁る天使達は、音もなく春の夜空を滑るようにゆっくりと飛んでいく。
天蓋では、ゆっくりと北斗七星が満月に水を撒こうとしていた。
「今日は楽しかったわ。ありがとね。」
「こちらこそよ。また気分が沈んだら、このヨハネのところにいつでも来なさい。」
胸を張るヨハネを見て、マリーはくすくすと笑っている。
「じゃあ、そろそろ帰るわね。」
「待って!」
気づいたらマリーを引き留めている自分がいた。
怪訝そうに振り返るマリーを前に、ヨハネはしどろもどろになってしまう。
「あ、えっと。この間、ふと小耳にはさんだ話なんだけど、私たちの姿が見える人間っているのかしら?」
思わず嘘をついたが、マリーの瞳にはその場しのぎのヨハネの嘘など、見透かされている気がしてしまう。
突然の質問に面食らったようなマリーはしばし考えた後、ゆっくりと口を開いた。
「……私も聞いた話なんだけどね、いるにはいるらしいわよ。小さな子供には見えることがらしいわ。」
それだけ言うと、マリーはくるりとヨハネに背を向けて、空に向かって翼をはためかせる。
「──ああ、それと」
ヨハネの方を振り返らずにマリーは告げた。
「子供と言っても、みんな見えるわけじゃないわ。」
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