5:名無しNIPPER[saga]
2020/06/11(木) 19:40:52.33 ID:fM9nM/xA0
『捜し物は見つかった?』
今でも、たまに夢に見ることがある。
手持ち無沙汰になった企画書のページをめくりながら、俺はただ、上層部に命じられた通り、割り当てられたオフィスで待機していた。
ああ、そうだ。ちとせと出会ったときのことだ。
この話を同僚にすると、決まって冗談だと言われるが、あの時、俺はきっと何かに、それこそちとせの持つ魔力とでもいうべきものに魅入られていたんだと思う。
ちとせの容姿は人並み外れて美しい。それは、担当している人間の贔屓ではなく、恐らく客観的な事実だといっていいはずだ。
例えば彼女の宣材写真を持って、街中を歩いている人間にこの人物をどう思うかと尋ねれば、十中八九美しいだとか綺麗だとか、そういう言葉が返ってくるだろう。それほどまでに、ちとせは人目を引く容姿をしている。
だが、それ自体は別にアイドルとしての決定打になり得る要素ではない。
言い方こそ悪いが、ちとせと比べて容姿で見劣りしていても、彼女より遙かに高い領域で今も活動を続けているアイドルはいる。そして、彼女に比肩する容姿の持ち主だってそうだ。
見目麗しいことはいつだってアイドルに、偶像に求められてきたことの一つだが、それだけでアイドルは務まらない。じゃあ何が必要なのかと訊かれれば、こっちが知りたいと思いきり吐き捨てたい程度に、大衆の好みは計り知れない。
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