【安価コンマ】貴方は世界を巡るようです 7巡目
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28: ◆Nq0wl2Ysns[saga]
2020/06/02(火) 03:11:34.30 ID:cdSYijSj0
――がさごそ、ごそごそごそ……っ! すすーっ、すー……すすすっすー……。

「――おっ……! かりかりかりかり……すすすーい、すー……い」

「ぁ…………」

――取れた。

ごそごそと大きく響いていた耳垢を取ろうと耳かき棒が動いていた音が消え、耳かき棒の先が耳の中の壁を伝うように外に向かって行く音が代わりに聞こえてくる。

じんわりと、大きな耳垢があった部分に空気が触れて温かくなってくる。

そして、取れたその耳垢をティッシュで取って。彼女は満足そうに宣言する。

「はーい、じゃあ耳垢は全部取れた……かな? うん、取れた取れた取れた」

「……ぇ?」

そう、悲しい宣言を。

全部取れた、ということは。もうこの至福の時間は終わりということで――。

「……もう、終わり、なの?」

「んもう、そんなに悲しそうな声出さなくていいのワーイーズー。じゃーん! まだ白いモフモフが残ってまーす!」

「!」

「おっ、パーッと嬉しそうになったね! ……んでも、ぼくこのモフモフの使い方分かんないんだよね。ワイズ分かる?」

残ってまーす、とか言ってたのにごめんね? と、彼女は謝るが。気にしない、僕は今――その、白いモフモフを想像しているのだ。

――白いモフモフ。耳かき棒の後ろのあれ。もしあれを――。

「……い、入れて」

「え?」

「僕の耳に入れてぇ……ね、ね? 早く早くぅ……」

――耳の中に入れたら、どれだけ気持ちが良いだろうか。

「ん、そんな風におねだりされたらそうするしかないなぁ。じゃあ、ゆっくりずぼっと行っちゃうね……あ、勿論囁きも忘れてないよ?」

白いモフモフが耳に近づいてくる、少しずつ少しづつ接近してくる。耳穴に入る、入る、早く早く早く早く――。


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