【安価コンマ】貴方は世界を巡るようです 7巡目
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23: ◆Nq0wl2Ysns[saga]
2020/06/02(火) 03:08:23.70 ID:cdSYijSj0
――――――――すりすり、すりすりすり。
「ふっ……ぁ……」
耳かき棒の先がちょっとだけ曲がっている所が、耳の中――ではなくて、周りをすりすりとマッサージをするように掻いていく。
何で中をやんないの? と訊いたところ。や、なんか周りもやったほうが良い感じしない? ほら、中はデザートだから。と滅茶苦茶感覚派な答えが返ってきて大丈夫かな……とか考えていたが。これは、良い。全然大丈夫だった。
耳穴の周りのぐにゃぐにゃした部分から一番上の外側の部分まで、挙句耳朶や耳の裏側にまで耳かき棒の先が優しく動いていく。
「どーう? 気持ち良い?」
「うん、僕これ好きぃ……何か、耳がポカポカして……ぁ……」
「なら良かった。じゃあ、もう少し続けていくよ? すりすり、すりすりすりー」
良かった良かったと彼女は口で擬音を交えながら、耳周りのマッサージ耳かきを続けていく。
……静かな保健室。その中で聞こえるのは彼女の吐息と彼女の口から出てくるオノマトペ。肌で感じるのは彼女の安心する体温に、鼻孔を刺激するのはシャンプーの良い匂い……。
そして、本来なら主役級に最高なそれらの刺激をバックに置いてしまうほどの。耳かきの先が耳を撫でる気持ち良さ。耳がポカポカしてきたからか、よりそれを気持ちよく感じてしまう。
………ユウナ、滅茶苦茶上手いじゃん。耳かき……。
「……はい、じゃあ周りはおーわり。ふっ」
その気持ち良さで気が抜けていたその瞬間。彼女は耳周りの耳かき終わりの宣言とともに、何かを吹き飛ばすように強く短く息を吹きかけた。
「んにゃぁあ……! ふ、不意打ちだめぇ……! 本当にだめぇ……!」
僕のそんなだらしのない声に、合わせて彼女はくすくすと笑う。
「はいはい、分かってる分かってる。じゃあ、耳の中に入って行くよー」
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