94: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:12:23.87 ID:5z9OpdEU0
倉庫のカギは開いていた。
一歩足を踏み入れると、中はあらゆるものが散乱する“ゴミ屋敷”と言うべき空間であった。
衣類、雑誌、食べ物のパッケージ、ぼろぼろの家具、壊れた電化製品、よくわからないどろどろしたもの――おそらくもとは生ゴミだったのだろう――それぞれがごちゃごちゃに散らばり、あるものは異臭を放ってる。
95: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:13:10.00 ID:5z9OpdEU0
しかしよく見ると、倉庫の中心には比較的きれいなソファー、テレビ、テーブル、パソコンなどが集められたスペースがあり、ちょうどリビングのような空間になっていた。
そのソファーの上で、大柄な男が一人、寝そべって酒を飲んでいる。
「…あ?オンナ…?」
96: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:13:54.99 ID:5z9OpdEU0
「狂二のやつ、もう次の女優を見つけて来たのかあ…?」
「ブヘヘ…ついこないだ撮影したばっかだってのに…おにいちゃん疲れちゃうよお…」
目の焦点が合っていない。よく見るとテーブルの上に注射器のようなものも見える。
97: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:14:26.85 ID:5z9OpdEU0
ぞくっ。
(ついこないだ…撮 影 し た…?)
まりの額から冷や汗がふき出す。
98: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:15:08.00 ID:5z9OpdEU0
「夜分にすまない。私たちは人探しをしているんだ。この女性を…」
紅はあくまで丁寧に、和香の写真を男に差し出した。
「さがすう…?」
99: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:15:53.16 ID:5z9OpdEU0
「……ああ、客か…ヒヒっ…可愛い顔して好き者かよ…まあ…見かけによらねえよな…こういうこたあ…」
男はよろよろと立ち上がり、テーブルの横に置かれたパソコンの前に腰を下ろす。
その腰には、10円玉ほどの大きさの、星形のチャームが5つ、ぶら下がっていた。
100: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:16:40.27 ID:5z9OpdEU0
「ネエちゃんたち初めてだよな……誰から聞いてきた…?…いや、いいや…大体想像つく…狭い業界だからな…ヒック…」
「初めてにしては…ヒック…目の付け所がいいや…ヒヒ…こいつは大ロングセラーだからな…」
101: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:17:16.98 ID:5z9OpdEU0
心臓が早鐘を打つ。
呼吸が荒くなる。
まりは、無意識のうちに紅の体に身を寄せていた。
102: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:18:08.22 ID:5z9OpdEU0
「最近はいろいろと…昔より難しくなってなあ…ヒック…この場で『モノ』を確認してもらって…OKならディスクに焼いて渡すんだ…」
のろのろとキーボードを操作しながら男が言う。
「……準備オーケー…ヒック…ほれ、確認しな…間違いないと思うがね…ヒヒ…」
103: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:18:41.10 ID:5z9OpdEU0
「!!!!うわあああああああああああ!!!!!!!!!」
まりの絶叫。
104: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 18:19:23.23 ID:5z9OpdEU0
――モニターに映し出されたのは、地獄だった。
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