周子「だから、あたしが逢いに往く」
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53:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 20:47:26.39 ID:XnGtX3Tv0

「術を自由に使えるようになって神代からの脱却だの人間自身が歩む尊さだのと散々宣っといてさ、いざ現代に入ってもその古い術前提の社会から全然前に進めてないよねー。かと言ってその術の進歩も大したことない、当初無かった術をほんの少し作るのに何千年かかってるの?って話……街並みとか雑貨は多少変わって便利になったけどさ、結局それって他国からの輸入品の魔改造……この国ってさ、自ら進む気なんもないよね」




「……」

「でさ、飽きちゃった!」

 字面だけなら後ろ向きなその言葉。
 しかし志希の表情は晴れ渡っている。
 この時を待っていたかのように、そんな自分を予見していたかのように。

「妖怪ももう周子ちゃん以外残ってないんでしょ?じゃあ最後の未知なる物への興味も全部解消。あとは失踪しちゃうだけ!」

 そう声高らかに言うと志希は周子を覗き込む。

「ねえ周子ちゃん、あたしと一緒に逃げない?」

 思いがけぬ提案。
 問題児ここに極まれりといった発言。
 しかし何の皮肉か、周子が紗枝にあの日どれほど言いたかった言葉であったことか。

「あぁ……その言葉、あたしが聞く側になるなんてな」

「なになに?何の話〜?」

「いや、ええんや、こっちの話」


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