周子「だから、あたしが逢いに往く」
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50:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 20:37:47.98 ID:XnGtX3Tv0

「あれ、なんか機嫌悪い?……もしかしてお腹すいてるー?」

「あぁ、食ったろうか?」

「にゃはは〜やめたほうがいいよ、出られなくなるから」

「誰に向かって言うとるんや?」

「ううん、本当に無理だと思うよ。少なくとも今のシューコちゃんには」

 相変わらずの能天気な口調を崩すことなく志希が笑う。
 改めて周子はこの手術室らしき部屋を見渡すが、志希の発言もあながち嘘ではないのではと思えてくる。

 全方位に意識を向けるが、やはり出入口らしきものが一つもない。
 かと言って壁は見せかけのまやかしで放たれているわけでもない。
 術の気配はあるが、何かが違う。
 もっと別の性質の何かがこの壁に混ぜられている、そんな気がしてならなかった。
 ただ硬いだけ、ただ広いだけならその気になればいくらでも破壊できる自信が周子にはあった。
 疲れはするが御所での幻術を破ろうとした力業も選択肢の一つだ。

 だが何かが違う。
 術の気配にしても周子が今までに感じたことのないものだった。
 更に言えば、楓のそれのように単純に見たことがないだけではない。
 根本的とまではいかないが、出来上がった物があまりに異質すぎる。
 これは……

「そういうことか……そらあんた、煙たがられてもしゃーないわ」

「え〜、シューコちゃんまでそんなこと言うんだ。そんな古臭いこと言ってるから楓さんにコテンパンにされちゃうんじゃないのー?」

「余計なお世話や。だいたい煙たがられる理由が分かったてだけの話や、あたしはそんな観念持っとらんしどうでもええ。術なんざ道具や、好きに捏ね繰り回せばええ」

「なんだ話せばわかるじゃ〜ん!シューコちゃんのそういうとこ好きー」

「掌返すの早すぎるわ……」


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