周子「だから、あたしが逢いに往く」
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46:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 20:28:08.02 ID:XnGtX3Tv0

 気配がした。
 空間の境が一瞬揺らぎ、何者かが入ってきた。
 場所は……上、天井から。

「少し、お邪魔しますね」

 心も周子も、それに気づいた。
 宙に浮いた何者かが、その立ち姿を崩すことなく散りゆく花弁のように緩やかに降りて来る。
 すらりと細長い素足を黒の濁流に何の躊躇いもなく下ろし……濁流が消えた。

 周子が放出し続けていた黒いそれが煙のように消え失せ、辺り一帯はズタズタになった部屋の内装とあっけにとられる者達とが取り残された。

「はは……いつ見てもすげぇな……楓ちゃん」

 楓と呼ばれた女が心に振り向く。
 
「お待たせしてしまってすみません、随分と大変だったみたいで」

「どうってことな……痛たた」






 霞皇国女皇・高垣楓
 この国を治める最高位の者がそこに立っていた。

 頭痛に顔を歪める臣下達がここまで耐え抜いた理由。
 この都における最高権力者にして最高戦力。
 いかなる状況をも覆しうる逆転の切り札。
 王将が前線に出るという一見すると戦の定石から外れた采配は、この状況における王手に近いものであった。



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