周子「だから、あたしが逢いに往く」
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33:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 19:55:54.79 ID:XnGtX3Tv0

「せや……そう言えばうち、ずっと訊きたかったんやけど」
 
「どしたん?」

「シューコはんの名前ってどう書くん?」

 一瞬、音が消えたかのような。
 蝉の声も、風も葉擦れも、遠くの街の喧騒も
 何もかもが、ほんの一瞬だけ止まったようだった。

「……まぁそうよな、気になるよな」

 驚いたような、迷うような、困るような、悲しむような
 シューコのそんな目を見るのはあの日以来
 初めて会った日、名を訊いたあの日、あの時の目だった。

「あたしな、ほんまに知らんのよ、自分の名前」

 驚きはしたが、それでもどこかそんな気がしていた。
 紗枝は静かに続きを待つ。

「いつの間にか周りの人間からシューコって呼ばれるようになってな……せやから名付けの親すら知らんのよ」

 母に限らず親とは誰が該当するのだろうとシューコは考えたことがあった。
 おおよその察しはつくのだが確証など得られるはずもなく。
 それはここに居ないだけでなく、きっとただ一人ですらないのだ。

「きっとこれが自分の名前なんやろなってそう受け入れて生きてきた……せやから本当は名前なんてないんかもしれへんな……」

 あぁ、そうか。
 紗枝は確信する。
 直接それを訊かずとも、やっぱりそうなのだと。
 ただ、不思議だったから訊いたまでのこと。
 シューコがそのような存在だからといってこの想いが変わることなどない。

 だから、そうだからこそ。
 自分にできることをしよう。
 シューコがそう教えてくれたように。
 いっぱい助けてくれたのだから。



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