周子「だから、あたしが逢いに往く」
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27:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 19:46:54.22 ID:XnGtX3Tv0

 なんとか誤魔化せたようだと胸を撫で下ろす。
 志希には見破られたが、紗枝にはまだ正体を知られていないはずだ。
 シューコとしては可能な限りこのまま知られずにいたいと考えていた。
 
 気まぐれで声をかけたとはいえ、こうしてその後も会ってみると案外悪くはないと思えるようになっていた。
 かつては人間と言葉を交わすなど考えたこともなくむしろ嫌ってすらいた自分からは想像がつかない程の変化だ。
 今でも人間と共に手を取り合おうなどとは考えられないのだが、
 ある時からはあまり関わらず遠くから見物するだけならば丁度良い賑やかしだと思えるようになったのだ。

 ただ、紗枝に対してのこの気持ちはそれだけでは説明がつかないとシューコ自身も分かっていた。

 幼い頃より幾度となくお供え物を持ってきてくれたのは事実……自分宛ではなかったが。
 この社で礼儀正しく振舞おうと頑張っていた姿が微笑ましかったのも事実……作法が無茶苦茶だったが。
 ただ、こういう子もいるのだと、姿を見るなり討伐せんとする者ばかりではないのだと、それは紗枝と共に過ごす時間でよく分かった。
 だから少しくらい背中を押してやるのも悪くはないだろう。そう思っていた。
 
「ねぇ紗枝ちゃん、紗枝ちゃんはどんな人になりたいんやっけ?」

「どんな人……?」

「ほら、将来こうなりたいとか、何ができるようになりたいとか、そんなんよ」

「うーん……」

 幼い頃より紗枝が抱いてきた理想の将来像、それは未来に思い悩む今でも変わることはなかった。

「お母はんみたいな人!」

「この前教えてくれたあのかっこいいお母さん?」

「うん!」

「そっか!そんで、どういったところがそう思うんやったっけ?」

「えーっとな、字綺麗でな、お歌も上手くてな、術も凄くてな……」

 見事なまでに以前と同じ褒め方だと思いながらも、シューコは以前とは違う踏み込み方をする。

「紗枝ちゃんも同じ事ができるようになって、すごいって言ってもらいたい?」
 
「できたらええなとは思うけど……」

「けど?」

「……けど、たぶん違う……そうやない」

 


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