周子「だから、あたしが逢いに往く」
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25:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 19:39:18.17 ID:XnGtX3Tv0






 7月の中頃
 今年は梅雨が明けるのが例年より早いようで、遠くに立ち上る入道雲は見えども空一面を覆う灰色は過ぎ去って久しい。
 それでも空気は湿り気を増さぬ日は無く、小鳥の歌よりも蝉の喚き声が目立つようになって、これでもかとばかりに暑さの演出に拍車がかかる。
 
「あぁ〜生き返る〜」

 こんな日に紗枝とシューコは何をしているのかと言うと、神社の脇の日陰で涼を取っていた。
 シューコが裏の倉庫から引っ張り出してきた大きな木桶に雨水を溜めてそこに二人して足を突っ込み腰掛ける。

 実はこれ、紗枝にとっては初めての体験だった。
 紗枝の祖父が冬場に湯を張った盥に両足を突っ込んでいるのは見たことがあったが、成程こんな方法もあるのかと感心する。
 この国では余程の貧困層でもない限り家には便利な術式搭載家電があって熱いも寒いもそれ一台で解決する。
 小早川家にも当然配備されており、こんな方法で涼を取ったことはなかったが、やってみると案外楽しいものだった。
 シューコにこんな日陰に誘われた時には蚊が沢山いるのではないかと心配になったが、いざこうしてみるとそんな気配が微塵もない。
 腕も裾もこんなに捲り上げて肌を晒しているのに全く刺されることが無いことを、口には出さずとも紗枝は気が付いていた。

 こう見えてシューコは案外細やかなところに気が利く人なのではないかと、最近紗枝はそう思うようになった。

 脱ぎ捨てたはずの草履が境内に上がり込んだ帰りに見るといつの間にか奇麗に揃えて砂も払われてあったり
 二人で石段を降りる時には必ずシューコが下を歩いて手を引いたり
 そう言えば二人並んで散歩している時にもこれだけ背丈が違うのに歩く速度が同じだった。
 今にしてもそうだ。方法は分からないが、何らかの術で蚊を追い払っているのではないだろうか。
 気付かない内に色んな面で気遣ってくれているようだ。

 佳い人を探すなら気が利く相手を探しなさい、と母にもそう言われていたのを思い出す。  
 もしかしたらこういう事を言うのかなと思う。
 うん、やはり涼を取っても夏は暑い。


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