16:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:15:09.74 ID:GKexH31W0
かなり大きい会場だ。最終選考に残った子達とはいえ、さすがにここまでの大舞台は経験したことが無いだろう。事務所の本気度が伺える。ここで合格した子を本気で売り出すつもりだ。
ところで、この会場に着いて、驚いたことが三つある。
17:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:15:44.48 ID:GKexH31W0
最終審査は、実際に一人一人が1ステージこなして、全員の出番が終わった後に観客が投票するシステムのようだ。
1人目のステージが始まった。見事なダンスだ。コンマ1秒のズレさえないように見える。
2人目。急に漫談を始めた。さすがは何でもありのシンデレラプロダクション。しかも中々面白い。
18:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:16:20.36 ID:GKexH31W0
103人目。幸か不幸か、大トリは彼女だった。
彼女のステージが始まる。その瞬間、僕は彼女から目が離せなくなっていた。得意なポージングを中心に魅せつけてくるステージ。
彼女よりも良いアイドルは今日の102人の中にもたくさんいた。それでも、今日一番輝いているのは彼女だ、と胸張って言えるくらい圧倒された。何故だかは分からない。どう表現したらいいかも分からない。
19:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:18:09.13 ID:GKexH31W0
彼女の出番が終わった。引き続いて投票時間に入る。
数分後、アナウンスが入った。集計が終わったようだ。電光掲示板に出された合格者3人の中に、彼女の名前は……
20:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:18:44.16 ID:GKexH31W0
僕はイベント後の舞台袖の雰囲気が結構好きだったりする。出演者、スタッフが一体になっていた場所がもぬけの殻になって、明かりは非常口の緑のランプだけ。
あれだけ熱気に渦巻いていた場所がたった数時間でこんな風になるのがおもしろくて、会場の人に注意されるまで居座ったこともあるくらい。
21:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:19:35.50 ID:GKexH31W0
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22:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:21:30.80 ID:GKexH31W0
「よう、久しぶりだな。8年かけてようやく立てたステージに挨拶、ってとこか?」
『そんなところよ。あんたはなにしてんのよ、こんなとこで。出演者とスタッフ以外は立ち入り禁止よ』
「そう堅いこと言うなよ。そうだな……かっこいい言い方をすれば、お前に会いに来た、ってとこだ」
23:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:23:31.95 ID:GKexH31W0
「……残念だったな」
『いいのよ。さっきこっそり全員の結果見ちゃったんだけど、私何位だったと思う? 103位よ、103位。最下位だったの。しかも得票数1。逆に気になるよね。私に1票入れた見る目のないバカは誰なんだろうって』
「確かに。相当なバカだろうな。なんたって才能無しアイドルを8年も担当してるのに結局放り投げて逃げるんだから。普通そこまで行ったら死なばもろとも、だよな」
24:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:24:19.20 ID:GKexH31W0
『でも、今のあんたならもう一回出来るんじゃない? プロデューサー。なんだか上手くいく気がする』
「そうか? そう言ってもらえるとありがたいな。ちょっと考えとくことにするよ。デカいイベントも終わって、どうせもう事務員のヘルプは要らないだろうしな」
『そうやって真に受けてまた私みたいに不幸な女を生み出すのよね、あんたみたいな奴って』
25:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:24:56.45 ID:GKexH31W0
今日はレッスンの見学だ。と言っても、アイドルのレッスンじゃない。
あのオーディションの後、事務員ヘルプの必要が無くなって、専ら雑用係になっていた僕の頭の中には、彼女の「もう一度プロデューサーをやってみる」という、アドバイスだかリップサービスだか何だか分からないものが常に漂っていた。
またアイドルプロデューサーをやってみたいという気持ちは無いということは無かったけど、よく考えたら歌が分からないアイドルプロデューサーなんて馬鹿げている。なんで今まで不思議に思わなかったのだろう。
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