50:名無しNIPPER[saga]
2020/04/29(水) 01:05:07.97 ID:SPkljqcV0
今度は父が思案する番でした。
彼方を見つめながら口元に手をやる癖は、妻が身籠ったのを機に煙を断ってからも、
どうやら染み付いて剥がれないようです。
「父親としては、本音を言うならやらせたくないよ」
「だろうね」
「ただ、親としての気持ちが勝った」
「親の……?」
「なぁ、加蓮。加蓮は、何かを調べ回って……いや。何かをずっと、探し続けてただろう」
あまりにびっくりしたものですから、
加蓮は筋肉を伸ばし過ぎてしまって、慌てて逆方向に力を逃しました。
親というのは実に不思議なもので、
本人すら知らないような答えを、いつの間にか懐にしまい込んでいたりするのです。
加蓮が見つめる前で、
かつてはキャスターを放り込んでいた胸ポケットから短い言葉を取り出して、
弄ぶように掌を揉み合わせました。
「見つかるといいなって、思っただけさ」
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